2014 Fiscal Year Research-status Report
小胞体ストレスセンサーBBF2H7による細胞増殖制御機構の解析
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26860191
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
ZHANG YIZHOU 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 研究員 (70711117)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | BBF2H7 / 小胞体ストレス応答 / 分子標的癌治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
固形癌の病巣内部は低酸素/低グルコース状態にある。この劣悪ながん微小環境を生き抜くために癌細胞はストレス抵抗性を獲得することで増殖・転移を可能としている。小胞体ストレスセンサーとして機能するBBF2H7は、前立腺癌、膵臓癌、神経膠腫や肝癌などの固形癌において、発現が亢進していることが確認された。固形癌におけるBBF2H7の役割を明らかにするため、BBF2H7が強く発現しているヒト肝癌細胞株HepG2を用いて、ノックダウン実験を行った。その結果、BBF2H7が抑制されることによってHepG2細胞の増殖、抗アポプトーシス及び遊走能力が減弱することを明らかにした。 BBF2H7は小胞体ストレス負荷に応答して、細胞質側ドメインと小胞体内腔ドメイン(以下略称:C末端断片)に切断される。ジャンクと思われた後者は、神経膠腫細胞U251MGの増殖に影響を与えるのがレスキュー実験により証明された。小胞体ストレス発生時、BBF2H7のC末端断片の局在及びその機能について、助成対象者が共著で報告した論文において検討した。C末端断片が細胞外に分泌された後、ヘッジホッグおよびヘッジホッグの受容体であるPtch1と結合し、ヘッジホッグシグナルを活性化させることが解った(Saito, Zhang et al. Molecular Cell, 2014)。 BBF2H7はヘッジホッグシグナルを活性化して癌細胞の増殖を促進させる働きがあるため、BBF2H7 のC末端断片の機能を抑え、ヘッジホッグシグナルを抑制できる抗BBF2H7中和抗体の作製を試みた。現段階で作成されたポリクローナル抗体をU251MG細胞の培養上清に添加したところ、細胞増殖が低下していることが見られた。細胞増殖の抑制に伴って、癌細胞の遊走および侵襲能力が低下したことが裏付けられた。また、抗癌剤の同時投与実験により、癌細胞の抗癌剤に対する感受性が上昇していたことも観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画であった小胞体ストレストランスデューサーの分泌因子としての機能解明に関して、BBF2H7のC末端断片が細胞外に分泌され、周辺細胞の細胞増殖を促すシグナル伝達分子として機能するのを明らかにした。BBF2H7のC末端断片を抗原としてポリクローナル抗体を作製し、培養細胞の上清に添加したところ、この抗体は神経膠腫細胞の増殖を抑制できることが証明された。したがって、計画はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞増殖作用のあるモノクローナル抗体をスクリーニングし、小胞体内腔ドメインが有する生物活性の抑制を指標にして目的クローンを得る。各クローンを、肝癌細胞を移植したヌードマウスに持続注入し、腫瘍の成長速度を解析する。抗体投与後、各臓器に及ぼす影響を厳密に観察し、有効かつ安全な新規分子標的治療薬開発に向ける。
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Causes of Carryover |
薬品を購入したとき、年度末のキャンペーンを利用したので、金額が予定より安くなりました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度のアメリカ出張費用の補いとして使用する予定です。
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Research Products
(2 results)