2015 Fiscal Year Research-status Report
メダカを用いた臓器に特有な形態と適切なサイズを制御する分子機構の解明
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26860197
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
殿山 泰弘 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, プロジェクト特任講師 (20467393)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非対称分裂 / メダカ / 幹細胞 / がん幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、既に解析対象となっている機能未知遺伝子KAO-0185の詳細な機能解析を主に実施した。複数のヒト由来細胞やメダカ由来細胞において、KAO-0185が、低頻度ではあるが細胞分裂時に一方の細胞へ非対称に分配されることは、2014年度の時点で既に見出されていたが、当該年度では特にヒト大腸癌由来Caco2細胞において非対称分配時の局在が幹細胞マーカーLgr5とほぼ完全に一致することが明らかとなった。また、Caco2において飢餓ストレスや小胞体ストレスの存在下またはDNA損傷時にKAO-0185の発現レベルが劇的に減少することも明らかとなった。興味深いことに、上記のストレス存在下においてKAO-0185の非対称分配の頻度の増加がみられた。さらに、酵母ツーハイブリッド法によりKAO-0185が小胞輸送に関与する複数の分子と相互作用することが示唆された。今後、KAO-0185と非対称分裂との因果関係を重点的に調べる必要があるが、KAO-0185が幹細胞および癌幹細胞における非対称分裂を生じる機構に関与する可能性が示唆された(特許出願準備中)。小胞輸送と非対称分裂との関係については、不明な点が多く、本研究が幹細胞の非対称分裂における新たな機構解明に貢献することが期待される。 さらに、ヒトゲノムデータベースの更新に伴い、既知ドメインを持たない機能未知遺伝子リストの更新を実施した結果、カオナシ遺伝子は、ノンコーディングRNAであると判明したことや機能が報告されたなどの理由で1029種から約750種となった。また、PSORTIIを用いて細胞内局在予測を行った結果、約30%の遺伝子が核および細胞質に局在する可能性が示唆された。また、相同性を基に比較ゲノム解析を行った結果、霊長類特異的、またはヒト特異的な遺伝子が存在することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、臓器の形態形成に関わる機能未知遺伝子を探索するという計画であったが、研究計画時に既に着目していた遺伝子が当該研究の目的を達成するという意味において、極めて重要な遺伝子であることが判明した。また、KAO-0185の詳細な機能解析を行うのに必要なメダカ変異体などの材料も既に得られている。しかしながら、マイクロアレイについては未だ眼に関するものしか進んでいないため、予定よりも遅れているものもあることからこの自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
幹細胞の維持や非対称分裂を生じる機構は、臓器を構成する各種細胞の組成に大きく寄与することから、臓器の形態形成の初期過程において極めて重要である。したがって、本分子の機能解析を重点的に行うことは当初の目的に十分沿ったものであると考えられる。今後もメダカと培養細胞を用いて、幹細胞におけるKAO-0185の機能解析に焦点を絞って、研究を継続する予定である。
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