2015 Fiscal Year Research-status Report
Toll様受容体4複合体を介した自然免疫の機能におけるコアフコースの意義
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26860201
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
飯島 順子 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (10559636)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糖鎖 / コアフコース / TLR4 |
Outline of Annual Research Achievements |
Toll様受容体(Toll-like receptors,TLR)は自然免疫を担うマクロファージなど免疫系細胞に発現し、外来の病原体特有の分子パターンを特異的に認識、病原体を排除することで感染を防御する重要な役割を果たしている。 フコース転移酵素α1,6-fucosyltransferase(Fut8)は、フコースをN型糖鎖に付加させコアフコースと呼ばれる糖鎖を合成する糖転移酵素である。Fut8欠損マウスは成長遅延や肺気腫など重篤な症状を示すためコアフコースが生体に必須であることが分かるが、自然免疫における機能は不明である。そこで本研究では、自然免疫の重要な因子であるTLR4の機能制御にコアフコースが関わるか、分子レベルで明らかにすることを目的とした。 リポ多糖 (Lipopolysaccharide,LPS)はグラム陰性菌の細胞外膜の構成成分であり、TLR4複合体を受容体とし炎症性サイトカインの合成を誘導する。本研究で野生型、Fut8を欠損した培養細胞を用いてLPS刺激後のサイトカインの分泌を比較した結果、Fut8欠損細胞ではIL-6の分泌に差はない一方でIFN-βの分泌が著しく抑制された。 そこでコアフコース欠損時のTLR4シグナルの詳細を検討した。TLR4はLPSと結合したのちに二量体を形成し、その後TLR4が細胞膜に局在したMyD88依存的シグナルによりIL-6を、TLR4のエンドサイトーシスを介したTRIF依存的シグナルによりIFN-βの発現を誘導する。Fut8欠損細胞ではLPSに対する結合性やTLR4二量体形成は正常であるにも関わらず、その後のTLR4複合体のエンドサイトーシスが変化することでシグナル伝達が抑制されることが分かった。この結果より、コアフコースは自然免疫において、TLR4複合体のエンドサイトーシスを介したサイトカインの分泌に必須であると結論できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では自然免疫の重要な因子であるTLR4に着目し、TLR4の機能におけるコアフコースの役割を明らかにすることを目的とした。そこでまず、野生型、Fut8を欠損した培養細胞を比較して、TLR4のリガンドであるLPS刺激時の表現型と、コアフコースがTLR4にどのように関わるか分子メカニズムを調べた。その結果、上記「研究実績の概要」で記した通り、コアフコースはLPS刺激におけるTLR4複合体のエンドサイトーシスに必須であり、コアフコースの欠損に起因するエンドサイトーシスの低下はIFN-βの分泌を抑制することを明らかにした。 以上の結果は主にマウス胎児由来線維芽細胞等の培養細胞を用いた研究であり、他の細胞でも同様の現象が得られるかの普遍性が不明である。特にマウスマクロファージなど免疫系細胞を用いるなど、よりvivoに近い条件で調べる必要がある。そこで、Fut8欠損マウスは多くが胎生致死となるために、Fut8を欠損した胎児肝細胞由来マクロファージを用いた測定系を手掛けたが、研究室の閉鎖に伴う研究機関の変更と雇用の不確定など研究環境の重なる変化のため、長期的なマウスの維持を伴う実験は不可能になった。より簡便なFut8ヘテロマウス由来の腹腔マクロファージを用いた解析では、野生型マウス由来の腹腔マクロファージと比較してIFN-βの分泌に差がなく、Fut8を欠損した免疫系細胞を用いた解析が望ましいと考える。 このように、自然免疫の重要な因子であるTLR4において、コアフコースを介した免疫応答の機構を新たに明らかにしたことで当初の主となる目的は達成できたと考える。今後、マウスマクロファージなど免疫系の細胞を用いることで更にvivoに近い現象を検討する必要性があると考え、【現在までの進捗状況】の結論を「(2)おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で、コアフコースはLPS刺激におけるTLR4複合体のエンドサイトーシスに必須であり、コアフコースの欠損に起因するエンドサイトーシスの低下はIFN-βの分泌を抑制することを明らかにした。今後はこの結果を論文にまとめて国際誌に発表する。 また、本研究では主にマウス胎児由来線維芽細胞を用いた解析であるため、TLR4を発現している他の細胞を用いFut8をノックダウンを行うことで、本研究で得られた知見の普遍性を検討する。
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Causes of Carryover |
研究室の配置の変更、研究室の閉鎖に伴う移動、継続した雇用の不確定等の研究環境の重なる変化により実験を停止する必要期間が生じたと共に、研究室でのマウスの長期維持を伴う実験が不可能になったため、培養細胞を用いた実験と、より簡便なマウスを用いた解析に実験を特化したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は培養細胞を用いた実験とより簡便なマウスを用いた解析に実験を特化したため、 得られた解析結果の普遍性を他の細胞、特に免疫系の細胞を用いて更に調べる。 本研究は「自然免疫における糖鎖の機能」の解析を目的としていることから、本研究で得られた知見を元に、免疫や糖鎖関連の学会に参加し各分野の専門家と意見を交換し、本研究で得られた成果を学会で発表、論文としてまとめて国際誌に報告する。
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Research Products
(2 results)