2014 Fiscal Year Research-status Report
睡眠時無呼吸患者における心血管病発症・進展メカニズムの解明
Project/Area Number |
26860217
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
京谷 陽司 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10706534)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 睡眠時無呼吸症候群 / 間歇的低酸素症 / 血管平滑筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度における学会発表は、睡眠時無呼吸症候群 (SAS) がリスク因子とされる糖尿病を対象に間歇的低酸素症 (IH) による糖尿病発症の分子メカニズムを検討している本学の他講座と共同し、SASによる糖尿病並びにアテローム性動脈硬化発症の分子メカニズムの概要を9th Metabolic Syndrome, Type 2 Diabetes and Atherosclerosis Congressにて報告した。 平成26年度の研究結果は以下の通り。① IHによりMAPキナーゼの一部やAktのリン酸化が一過性に促進され、その後normoxiaよりも低下する。また、最終的なリン酸化の低下は転写因子Elk-1でも同様に認めた。② dual specificity protein phosphatase 1 mRNAがIHにより増加する。③ 炎症性サイトカインであるIL-6のmRNAがIHにより誘導される。④ アスコルビン酸がIHによる細胞増殖を抑制する。⑤ ラットepiregulinのpromoter領域 (+15~-1825) にIH応答性の領域が存在する。これらの一部は、新しい知見を示すだけでなく、臨床やin vivoでの報告も支持すると共にSASによる細胞への影響を検討するための我々の実験条件がin vitroモデルとして使用可能であることを示している。 現在、④に関してより詳細に検討しているが、最終的にSASによる心血管病の発症予防に繋げること並びにIHに対する普遍的な細胞応答を解明することを目的として、ヒト血管平滑筋細胞を用いた同様の検討も行っている。現在のpromoter領域の検討によりIH応答性の領域や因子が解明されることで、IHへの細胞内応答メカニズムの解明に大きく寄与するだけでなく、これまでの結果を含めたIHによる細胞への影響の全体像の把握へと繋がるものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れている理由の一つには研究以外の業務の増加がある。医学部における講義でteam based learning (TBL) の担当となったこと、並びに医学部と看護学部の講義において担当内容が増えたことが挙げられる。これらにより講義や試験の準備などの業務が増加した。また、地域医療への貢献を目的とした医療業務の依頼、例えば休日診療所からの定期的な補助の依頼が入ったことが挙げられる。以上のことから、本研究に対してのエフォートが低下した。 次に遅れている理由に細胞による影響がある。本来の研究目的では、これまでIHにより細胞増殖やepidermal growth factor (EGF) family等の発現の変化が認められていた初代培養ラット大動脈平滑筋細胞を用いて研究を進めていくこととなっていたが、reporter assay等の遺伝子導入を伴う研究の際にその導入効率の低さが影響したものである。この問題の解決を試みるに当たり、専用試薬への変更やelectroporation等を試したが突出して改善したものはなく、時間を費やした。現在は、最終的なヒトへの展開も考慮してヒト血管平滑筋細胞を用いた検討へ展開する予定であるが、これまでの結果とヒト血管平滑筋細胞での結果との整合性の確認している。これまでの検討結果とヒト血管平滑筋との整合性が確認できれば、さらに遺伝子の導入効率を確認するとともに種に依存しない普遍的なIHへの応答メカニズムの検討へと展開していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのIHによる細胞への影響を検討した研究結果のうち、epiregulin、erbB2 receptor、dual specificity protein phosphatase 1およびIL-6のmRNAの増加は、IHに細胞が応答したことにより転写の活性化あるいはその分解が抑制されたものと考えられる。まず第一にIH応答性の転写領域を特定することで、IHにより影響を受ける遺伝子の絞り込みが容易となるだけでなく、IHに対する細胞応答の全体像を得るための有効な手段となり得ると考える。現在得られている結果に照らすと、IHのMAPキナーゼへの影響やIHによる細胞増殖に対するアスコルビン酸の抑制作用に対して、その意義を見出す一助となるだけでなく、より焦点を絞った検討へと研究の効率も上がると考える。また、現在はこれまでのラット血管平滑筋細胞だけでなくヒト血管平滑筋細胞を用いた検討への展開を考えており、これにより睡眠時無呼吸症候群における心血管病リスクの上昇をヒトの細胞にて検討することになり、更には種に依存しない普遍的なIHへの細胞応答メカニズムの解明へ繋がるものと考える。 以上のように、IHに対する血管平滑筋細胞の細胞内応答メカニズムの解明という研究目的は変わっておらず、より普遍的なIHによる細胞応答メカニズムを検討していくことを目標としている。
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Causes of Carryover |
各種検討をするにあたって当研究室に試薬やキット等の消耗品が既に多量にあったため、そちらを使用した。その結果、次年度使用額が生じる結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に使用した各種試薬やキット等の消耗品が既になくなってきているため、分子生物学的検討を目的とした各種消耗品を中心に購入する予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] Sleep apnea syndrome as an emerging risk factor for type 2 diabetes and atherosclerosis: evidence and underlying mechanism2014
Author(s)
Yoji Kyotani, Hiroyo Ota, Asako Itaya-Hironaka, Akiyo Yamauchi, Sumiyo Sakuramoto-Tsuchida, Jing Zhao, Kosuke Nagayama, Kentaro Ozawa, Shin Takasawa, Hiroshi Kimura, Masanori Yoshizumi
Organizer
9th Metabolic Syndrome, Type 2 Diabetes and Atherosclerosis Congress
Place of Presentation
Kyoto International Conference Center
Year and Date
2014-09-12 – 2014-09-14