2015 Fiscal Year Research-status Report
睡眠時無呼吸患者における心血管病発症・進展メカニズムの解明
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26860217
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
京谷 陽司 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10706534)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 睡眠時無呼吸症候群 / 間歇的低酸素症 / 血管平滑筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度における学会発表は第89回 日本薬理学会年会にて行い、睡眠時無呼吸症候群 (SAS) によるアテローム性動脈硬化発症の分子メカニズムについてこれまで我々が検討し明らかとなった研究成果を報告した。 平成27年度の主な研究結果の詳細は以下の通り。これまでの培養ラット大動脈血管平滑筋細胞を用いた検討を行ってきたが、promoter assay等においてその遺伝子導入効率の低さや本研究が最終的にヒトにおける細胞応答メカニズムの解明を目的としていることから、不死化ヒト血管平滑筋細胞を用いた検討へ移行した。ラットの場合と同様に不死化ヒト血管平滑筋細胞の場合でもSASの特徴とされる間歇的低酸素暴露 (IH) により、① epidermal growth factor familyのepiregulin mRNAの増加を認め、また② epiregulinのプロモーター領域が活性化されることを確認した。一方、epiregulin mRNA増加の要因を検討する中で、その安定性や発現に関与するとされるmicroRNAに関して検討した結果、③ 一部のmicroRNAの発現がIH暴露により変動することを確認した。 現在、IHによる血管平滑筋細胞の増殖を促進するepiregulinの発現増加に寄与する重要な因子としてmicroRNAを標的とした検討を行っている。現在のmicroRNAの検討によりIH暴露で発現変動する蛋白質等を絞り込みその全体像を把握することは、IHに対する細胞応答メカニズムの解明に大きく寄与するものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅れている理由は大きく2点ある。 1つ目は、他の研究を含めた業務の増加である。平成27年度より医学部における担当講義が増え、これにより講義や試験準備等の業務が増えた。また、本研究に加えて別内容の研究を行うこととなり、そちらへの業務も増加した。以上のことから、本研究に対するエフォートが低下した。 2つ目は、不死化ヒト血管平滑筋細胞を使用するにあたっての事務手続きによる影響である。本研究はこれまで培養ラット大動脈血管平滑筋細胞を用いた検討を行ってきたが、promoter assay等における遺伝子導入効率が非常に低く試行錯誤しても改善が認められなかったことや最終的にヒトにおけるIHへの細胞応答メカニズムの解明を目的としているため、市販の不死化ヒト血管平滑筋細胞を購入することを決断した。しかしながら、当該細胞はカルタヘナ該当商品であり、その購入や使用に伴う各種申請に関して本学にて承認されるまでに非常に長い時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
IHによるepiregulinの発現増加の一要因と推察される特定のmicroRNAの検討を進め、その因果関係を明らかとする。続いてそのmicroRNAとepireguinの関係性を培養ラット平滑筋細胞でも確認することで、種に関係なく普遍的に生じるIHに対する細胞応答であることを確認する。IHにより影響を受けるmicroRNAの特定は、そのmicroRNAが発現に影響を及ぼす可能性のあるmRNAをデータベース化されていることから、IHによりその発現が増減する遺伝子・蛋白質、更にはIHに対する細胞応答の全体像を解明するための有効な手段となり得ると考える。 また、これまでにIH暴露によるdual specificity protein phosphatase 1およびIL-6 mRNAsの増加や一部のmitogen activated protein kinaseのリン酸化への影響を確認しており、先述のmicroRNAの検討結果やその手法を用いることはそれらのメカニズムや意義を解明することに繋がるものと期待される。 以上のように、IHに対する血管平滑筋細胞の細胞内応答メカニズムの解明という研究目的は変わっておらず、より普遍的なIHによる細胞応答メカニズムを検討していくことを目標としている。
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Causes of Carryover |
各種検討を行うにあたって当研究室にすでに購入済みの試薬やキット等の消耗品があったため、そちらを優先的に使用した。また、購入した不死化ヒト血管平滑筋細胞がカルタヘナ該当商品でその購入や使用に際して本学の承認を得るまでに非常に多くの時間を費やしたため、その期間は研究を進めることができず経費を使用しなかった。以上のことから、次年度使用額が生じる結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在使用している不死化ヒト血管平滑筋細胞の培養やその研究には、専用の試薬が多数必要であるためそれらの購入に当てる。また、分子生物学的検討を目的とした消耗品を中心に購入する予定である。
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Research Products
(2 results)