2014 Fiscal Year Research-status Report
生体神経組織のマイトファジーイメージング法の樹立とその応用
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26860219
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
井下 強 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20601206)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、家族性パーキンソン病の原因遺伝子に着目し、神経細胞における機能・病態解析を行い、パーキンソン病発症機序の解明を試みている。本年度は、PINK1-Parkin経路の異常が、ハエのドーパミン神経のミトコンドリアに与える異常を解析した。PINK1-Parkin経路では、異常ミトコンドリア上のPINK1の蓄積がParkinのリン酸化を引き起こし、異常ミトコンドリア除去機構が働く。そこで、Parkinのリン酸化を修飾した変異体をショウジョウバエドーパミン神経で発現させた。ミトコンドリアの形態を分子遺伝学的手法を用いて観察したところ、リン酸化体や野生型Parkinの過剰発現は、ミトコンドリアの形態異常を誘導したが、非リン酸化体の過剰発現は、ミトコンドリア形態に影響しなかった。また、PINK1欠失系統では、Parkinリン酸化体の過剰発現は、ミトコンドリアに異常を誘導したが、野生型の過剰発現では影響が見られなかった。これらの結果から、ショウジョウバエドーパミン神経のミトコンドリアの機能維持は、PINK1を介したParkinのリン酸化により制御されるが、過剰なリン酸化は、ミトコンドリア異常を誘導することが明らかになった。さらに、生体イメージングにより、シナプス小胞分泌を観察したところ、Parkinリン酸化体・非リン酸化体の過剰発現は、ドーパミン神経のシナプス小胞分泌を低下させることが明らかになった。非リン酸化体の過剰発現でも小胞分泌に異常が生じたことから、Parkinは、ミトコンドリア機能維持とは独立した神経機能制御機構に関わることが示唆された。こうした、神経特有の機能におけるパーキンソン病原因遺伝子の機能解析は、あまり進んでいないことから、今後は、神経機能の着目し、研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたPINK1-Parkin経路を介した神経細胞におけるミトコンドリア機能維持機構の解明においては、Parkinリン酸化とミトコンドリア形態の関連を示すことができた。また、シナプス小胞分泌を生体イメージングにより解析する手法を確立でき、Parkinがシナプス小胞分泌に与える影響の解析も行うことができ、他の研究と合わせて論文として報告した。ミトコンドリアの維持機構とは独立した神経機能への寄与を確認できた点は、当該分野の研究に大きく貢献すると考えられる。しかし、マイトファジーに関しては、計画していた実験手法では確認できず、別の手法を確立する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
パーキンソン病の病態解明においては、マイトファジー機構の解明も重要であるが、神経機能の異常を解明することも重要であり、現在、解析手法が確立できているシナプス小胞分泌機能の解析を主軸に、他のパーキンソン病原因遺伝子の機能解析を進めていく。シナプス小胞分泌に関わるパーキンソン病の原因遺伝子として、LRRK2が報告されているが、LRRK2と関連する遺伝子Vps35もパーキンソン病の原因遺伝子である。そこで、本研究で確立できた手法を更に拡張し、Vps35やLRRK2の病原性変異体の発現が神経機能に与える影響の解析を進める計画である。また、生体イメージングだけでは確認できない神経機能の解析のため、電気生理学的手法の導入も計画している。
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Causes of Carryover |
当初の予定より実験の進行が速く、予定していたハエ飼育のための費用・人件費を抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
神経機能解析のため、これまでに行ってきた生体イメージング法の拡張(温度制御・薬剤潅流システム導入)と電気生理学的手法を用いた解析を計画している。いずれの実験手法も消耗品の使用が多いため、これmで異常の予算が必要となる。また、PINK1-Parkin経路関連遺伝子に加え、他のパーキンソン病原因遺伝子の機能解析も計画しており、系統購入・作成や維持のためのハエ飼育用品・人件費の増加が必要となる。機器の購入は多くないが、消耗品や人件費が必要であり、さらに、結果発表の費用も増加すると考えられる。
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Research Products
(4 results)