2015 Fiscal Year Annual Research Report
寄生性病原体は如何にして宿主細胞の生死を制御するのか?
Project/Area Number |
26860223
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
簗取 いずみ 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40454847)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肺炎クラミジア / エフェクター / 細胞内輸送 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、偏性細胞内寄生性細菌の一つである肺炎クラミジアが如何にして宿主細胞に感染し、宿主細胞内で増殖することが可能になっているのか、これらの機構の解明をすることを目的とする。初年度においては、酵母を用いた網羅的スクリーニングを行い、455種類の肺炎クラミジア分子の中から10個の候補分子を見出した。これらの分子は、宿主細胞の細胞内輸送経路に影響を及ぼすことで、1)宿主細胞からの栄養補充、2)ファゴソームーリソソーム融合阻害による宿主免疫系からの回避、3)アポトーシス阻害による増殖可能な宿主細胞の維持などを可能にすると考えられる。 肺炎クラミジアは菌体が宿主細胞に接着後、約3時間で宿主細胞内に取込まれる。その後宿主内で増殖を可能にする封入体を形成し(3-8時間)、その中で感染可能な基本小体から増殖可能な網様体へと形態を変換させ(8-12時間)、2分裂増殖をおこす(12-48時間)。十分に増殖すると再び基本小体へと形態を変え、宿主細胞を壊して次の細胞へと感染を拡大する(48-72時間)。このように感染時期特異的にその形態を変換させるクラミジアでは、発現時期の特定は、その分子機能の推測に重要な意味がある。興味深いことに、標的分子E02は増殖期に著しくその発現が増加し、その後急速に減衰することがわかった。また、細胞内小胞輸送に関与する化学修飾酵素に作用することも明らかにした。 また、アポトーシス誘導分子としてE01を見出した。これは、酵母・ヒト細胞いずれにおいても発現させるミトコンドリアに局在し、アポトーシスを引き起こす。この分子の詳細な機構については今後さらなる検討を要する。 肺炎クラミジアでは多くの分子の機能が不明であることから、本研究でのスクリーニング成果および標的分子の解明は、クラミジア感染機構の解明に貢献できたものと考える。
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