2014 Fiscal Year Research-status Report
結合蛋白に着目したStratifinによる肺腺癌初期悪性化の分子メカニズム解明
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26860230
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
柴 綾 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50708427)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肺腺癌 / 初期悪性化 / Stratifin / SKP1 / リン酸化cyclin E1 / トランスジェニックマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、肺腺癌の新規oncogeneと考えられるStratifin(SFN)の肺腺癌細胞における機能とその分子機序を解明することを目的としたものである。始めにSFNを肺のみで高発現させたトランスジェニックマウス(Tg-SPC-SFN)を作製した。これに発癌物質NNKを投与し20週観察し、その間10・15週の時点でCTを用いて肺を経過観察した。一部のTg-SPC-SFNでは10週からCTで肺に腫瘍が発生していることが確認できた。20週経過後、コントロールである野生型ICR肺における腫瘍発生率が11.1%であったのに対し、Tg-SPC-SFNでは47.8%と有意に高い結果となった。さらに興味深いことに、Tg-SPC-SFNはNNK非投与群でも28.6%に腫瘍が発生していた。これはSFNが肺腺癌の悪性化だけでなく発生にも関与することを示す。 次に、先行実験により肺腺癌細胞でSFN結合因子として同定されたSKP1とその制御因子の1つであるリン酸化cyclin E1の免疫染色を肺腺癌組織を用いて行った。SFN陽性症例はSKP1核・細胞質に陽性、SFN陰性症例はSKP1核のみ陽性になるという傾向があった。この結果はSFN発現を抑制するとSKP1の核内発現が有意に上昇するという先行実験の結果と一致し、SFNはSKP1と細胞質において結合し、その機能を抑制している可能性が示唆された。さらにリン酸化cyclin E1はSFNと同様に肺腺癌の悪性化とともに発現量が高くなっていくことも示され、SKP1を含むSCF複合体によるリン酸化cyclin E1のユビキチン化がSFNにより抑制された結果であると考えられる。 SFNはSCF複合体の機能抑制を介して肺腺癌初期悪性化を促していることが示唆され、SFN-SKP1の結合をブロックすることで初期肺腺癌の進行を阻止できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トランスジェニックマウスの樹立と管理に予想以上の時間を要したため、申請書の計画に記した26年度の実験全てを終わらせることはできなかった。しかし、トランスジェニックマウスを用いた実験では予想を上回る結果を得ることができ、研究に新たな展開をもたらしている。また、26年度に着手できなかったSFNとSKP1の結合部位の同定については、27年度に計画している内容と同時に進行させ十分に終わらせられるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度はSFNが肺腺癌の発生と悪性化を促すこと、それはSCF複合体の機能抑制を介したものであることを示すことができた。27年度はその知見を肺腺癌治療に応用することを目標として研究を進める。 具体的には、SFNとSKP1の結合を阻害できる物質を探索し、その制癌作用を評価する。阻害物質としては始めに既存の14-3-3(SFNの属する分子ファミリー)アンタゴニストを検討する。また、上市薬をスクリーニングすることにより、SFN-SKP1の結合を阻害できるものの同定も並行して行う。それらの物質を用いて、in vitroでは添加前後のSFN-SKP1結合力の変化を解析した後、肺腺癌細胞の増殖能抑制作用を評価する。さらにin vivoでは担癌マウスに経静脈/経口投与することで腫瘍サイズがいかに変化するかを解析し、新規抗がん剤として使用しうる可能性を探る。
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Research Products
(2 results)