2014 Fiscal Year Research-status Report
β2-ミクログロブリンアミロイド沈着による骨・関節破壊機構の解明
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26860236
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
大越 忠和 福井大学, 医学部, 助教 (90362037)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 透析アミロイドーシス / β2-ミクログロブリン / 細胞毒性 / 滑膜線維芽細胞 / エンドサイトーシス / リソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
透析アミロイドーシスでは、β2-ミクログロブリン(β2-m)アミロイドが主に関節、腱組織に沈着し、手根管症候群、破壊性脊椎関節症などの全身関節症状を引き起こす。しかしながら、β2-mアミロイド線維の沈着が骨・関節破壊を引き起こすメカニズムは未だ明らかになっていない。申請者は、これまでに試験管内で形成したβ2-mアミロイド線維がウサギ由来滑膜細胞(HIG-82)に対して、濃度依存性に毒性を発揮し、細胞死を引き起こすことをすでに明らかにしており、本研究では、β2-mアミロイド線維が細胞死を引き起こす分子機構を明らかにし、ひいては透析アミロイドーシスにおいてβ2-mアミロイド線維の沈着が骨・関節破壊を引き起こすメカニズムを明らかにすることを目的とした。 平成26年度の研究計画の(1)として挙げた、アミロイド線維投与による形態変化の観察において、光学顕微鏡観察では、核濃縮や細胞質の膨化、空胞化などの壊死性の変化と共に、アポトーシス小体と考えられる核の断片化を認めた。また、電子顕微鏡観察ではアミロイド線維がエンドソーム、あるいはリソソーム内に取り込まれており、線維投与6時間後ではこれらの膜の断裂や融合による細胞質内巨大空胞の形成やアポトーシスを示唆するような核の変化が認められた。TUNEL法では、線維投与群でアポトーシスの亢進が認められた。さらに、エンドサイトーシスを阻害するCytochalasin Dは、濃度依存性にアミロイド線維の毒性を抑制した。 以上の結果は、β2-mアミロイド線維が滑膜線維芽細胞内に取り込まれ、エンドソーム膜、リソソーム膜の破壊などを介して壊死及びアポトーシスの両者を引き起こすことで毒性を発揮している可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示したように、β2-mアミロイド線維が細胞死を引き起こす分子機構として、β2-mアミロイド線維が滑膜線維芽細胞内に取り込まれ、エンドソーム膜、リソソーム膜の破壊などを介して壊死及びアポトーシスの両者を引き起こしていることを示唆する結果を得ている。しかし、エンドサイトーシスを介した細胞毒性メカニズムの可能性に着眼し、Cytochalasin Dによるエンドサイトーシス阻害の効果などを検討する研究を行ったため、平成26年度に予定していた(2)(b) 細胞内活性酸素量の測定や(2)(c) 細胞内Caイオン量の測定は実施出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で示したように、β2-mアミロイド線維が細胞死を引き起こす分子機構として、β2-mアミロイド線維が滑膜線維芽細胞内に取り込まれ、エンドソーム膜、リソソーム膜の破壊などを介して壊死及びアポトーシスの両者を引き起こしていることが明らかになりつつあり、今後は、エンドソームマーカーやリソソームマーカーを用いた細胞内小器官の染色と、β2-mアミロイドに対する免疫染色などを用いて、この仮説を裏付ける研究を進めていく予定である。 また、平成26年度に予定していた(2)(b) 細胞内活性酸素量の測定や(2)(c) 細胞内Caイオン量の測定や、27年度に予定していた(3) β2-mアミロイド線維の培養細胞刺激作用、(4) ヒト由来初代培養細胞を用いた解析も行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究実績の概要で示したように、平成26年度の研究において、β2-mアミロイド線維が細胞死を引き起こす分子機構として、β2-mアミロイド線維が滑膜線維芽細胞内に取り込まれ、エンドソーム膜、リソソーム膜の破壊などを介して壊死及びアポトーシスの両者を引き起こしていることを示唆する結果が得られ、エンドーサイトシス阻害の効果などを検討する研究を行ったため、平成26年度に予定していた(2)(b) 細胞内活性酸素量の測定や(2)(c) 細胞内Caイオン量の測定は実施出来ず、試薬や消耗品などの購入を控えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように、平成26年度に予定していた(2)(b) 細胞内活性酸素量の測定や(2)(c) 細胞内Caイオン量の測定のための、試薬や消耗品などの購入、また、研究計画には挙げていなかったが、エンドサイトーシスを介したβ2-mアミロイド線維の毒性機構をさらに詳細に検討するために、エンドソーム・ライソソームマーカーや抗体の購入に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)