2014 Fiscal Year Research-status Report
病理標本を用いた深在性糸状菌症に対する発生動向調査
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26860250
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
栃木 直文 東邦大学, 医学部, 講師 (20446553)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 深在性真菌症 / 病理診断 / 接合菌症 |
Outline of Annual Research Achievements |
深在性真菌症のうち糸状菌感染症の最多を占めるAspergillus属感染症は新規薬剤の導入により制御が可能となってきた。一方で、Aspergillus属と鑑別を要する接合菌類や、形態学的に鑑別が不可能とされるFusarium属やScedosporium属は、薬剤感受性が異なる。真菌に対する培養検査の感度が低いことから、深在性真菌症の診断には病理組織切片上での菌種の同定が重要である。深在性真菌症の適切な診断が、特に造血幹細胞移植の成否に重要な結果をもたらすため、従前からの病理組織学的検討に加えて菌種に特異的な検出法を確立し、真菌感染症に対する診断技術の向上と発生動向調査を行うことを研究目的としている。 まず本施設におけるデータベース構築を行い、本研究の対象となる深在性真菌症症例の蒐集を行った。次に、近年剖検例のみならず生検あるいは手術標本において接合菌症が確認されること頻度が増えてきたため、過去の接合菌症症例について病理組織学的検討とともに基礎疾患や化学療法の有無について診療録から情報抽出を行った。その上で、病理組織学的に接合菌症との鑑別で最も重要な侵襲性アスペルギルス症においても同様の情報抽出を行った。接合菌症と侵襲性アスペルギルス症の両者を比較したところ、菌塊内での交点角に相違が見出され、この相違は統計学的に有意であった。この知見は、両者の鑑別にあたり重要と考えられる。 今後は両者の鑑別をより確実なものとすべく、症例を蓄積するとともに臨床応用が可能な簡便な鑑別方法の開発を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の前提となる確実なデータベース構築に慎重を期したため、実際の検討が当初の予定と比較して遅延している。今後は精力的に検討を行い、また検討結果を学会発表や論文公表を通じて還元したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
深在性真菌症の発生には真菌側の毒力とともに、宿主側の要因が大きく影響する。特に糸状菌感染症においては末梢血中好中球数が重要であり、剖検例における骨髄像の評価が必須と考える。またこれらの知見について適宜学会発表を行い、論文公表を最終目標とする。
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Causes of Carryover |
本研究の遂行のためには、基盤となるデータベースの構築が必須である。研究を開始するにあたり過去数十年にわたる剖検例の台帳を見直したところ、研究当初に予期されなかった追加症例を発見することが出来、当該症例の臨床データを追加検索した。このため、実際の研究に遅延が生ずることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
得られた症例を用いて実臨床で行われている手法のほかに、臨床応用がなされていない新規手法を用いて、菌種推定における感度および特異度の検索を行う。具体的には、in situ hybidization法やPCR法を用いた特異的な検知法の確立を目指す。また得られた結果につき学会発表を行って討論を行う。得られた知見に対し論文公表を行うことを最終目的とする。
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