2014 Fiscal Year Research-status Report
病理標本から感染症診断へ:高感度in situハイブリダイゼーション法の応用
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26860251
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
塩竈 和也 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (10387699)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ISH-LNA法 / ISH-AT tailing法 / SFTS / 日本紅斑熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、severe fever with thrombocytopenia syndrome (SFTS) virus検出のためのlocked nucleic acid (LNA)/DNAキメラプローブの作製、AT tailingプローブの作製ならびにin situ ハイブリダイゼーション(ISH)法による至適検出条件の確立を行った。LNA/DNAキメラプローブおよびAT tailingプローブは、SFTS virusゲノムの三分節(L, M and S segments)をターゲットとしたmRNAを検出するsenseプローブとgenomic RNAを検出するantisenseプローブをそれぞれ6種類ずつ受託合成した(合計12種類)。いずれも「BLASTN」を用いたホモロジー検索により、標的以外の遺伝子と相同性を持たないことを確認済みである。ホルマリン固定による核酸の断片化が予測されるため、プローブの長さは40塩基に設計した。LNA/DNAキメラプローブは、LNA : DNAの比率を雑種形成の反応効率が高い報告に準じて2 : 1になるように組み込んだ。AT tailingプローブは、同配列の3’末端側にATの繰り返し配列を20塩基加えた。免疫染色のための抗SFTS virus抗体は、共同研究先である長崎大学熱帯医学研究所ウイルス学分野よりマウスモノクローナル抗体を3種類譲渡して頂いた(クローン名:5G2, 1C3, 1A11)。 SFTS感染モデルマウスを用いて検討した結果、SFTSの特徴的所見である壊死性背景領域および血球貪食マクロファージに一致して明瞭な陽性シグナルが確認された。senseプローブとantisenseプローブ間および各分節のプローブ間における検出感度の差は認められず、いずれも同程度の良好なシグナルが検出できた。LNA-ISH法とISH-AT tailing法は、同程度の検出感度を示した。同じダニ媒介感染症である日本紅斑熱、壊死性背景が特徴的な壊死性リンパ節炎(菊池病)における交差反応は認められなかった。SFTS virus免疫染色では、1C3が最も良好な染色性を示し、ISH法における発現分布とほぼ一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、ほぼ研究計画どおりに進行している。一部実現できなかった項目が課題として残っており、次年度の研究計画と並行しながら進めていく。 SFTS virus検出のための高感度ISH法は、ISH-LNA法およびISH-AT tailing法のいずれの手法においても良好なシグナル検出が可能であることを確認した。senseプローブによるmRNAの証明とantisenseプローブによるgenomic RNAの証明にも成功し、両者の発現分布に差がないことも明らかにした。さらに、SFTS virusゲノムの3分節におけるプローブ間の比較では、いずれの分節をターゲットとしたプローブにおいても良好な染色像を得ることができた。陰性コントロールでは、同じダニ媒介感染症である日本紅斑熱との交差反応は確認されなかったため、本法が免疫組織化学的に日本紅斑熱との鑑別を可能にすると期待される。病理所見が酷似する壊死性リンパ節炎との交差反応がないことも確認できた。その他、Rickettsia (R) japonica感染細胞、R. conorii感染細胞およびOrientia tsutsugamushi感染細胞(Karp株、Kato株、Gilliam株、Shimokoshi株)のセルブロックも加えて検討したが、いずれも交差反応は認められず、本法がSFTS virusに特異性が高い検出系であることが証明できた。 リアルタイムRT-PCRの試薬は準備できており、すぐにでも実行できる状態である。リアルタイムRT-PCRとISH法および免疫染色との発現比較は、次年度に持ち越して早急に実施する。 次年度に予定されている臨床検体を対象とした検討のために、本学「疫学・臨床研究等に関する倫理審査委員会(平成27年度より医学研究倫理審査委員会)」への申請書を提出して、すでに承認を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
SFTS virus検出のためのリアルタイムRT-PCRとISH法および免疫染色の比較を行う。リアルタイムRT-PCRを指標とすることによって、どの程度のコピー数で免疫組織化学的に検出できるか明らかにする。すでに本学「医学研究倫理審査委員会」から臨床検体使用の承認を得ており、次のステップとして臨床検体への応用に移行する。SFTS症例は計7症例確保できており、すでに各共同研究施設からの承諾を得ている。本研究においてすでに確立したISH-LNA法とISH-AT tailing法を用いて、各臓器(肝臓、脾臓、リンパ節、骨髄)における発現を詳細に解析する。さらに、リアルタイムRT-PCRおよび免疫染色との発現比較を行う。染色が良好な症例を選出して、pre-embedding法による免疫電顕および電顕ISH法を施行する。SFTS virusは径100 nm程度で円形のフレボウイルスであり、電顕レベルでDABに着色した部分が一致するのか確認する。 SFTSと同じダニ媒介感染症である日本紅斑熱リケッチアを対象とした高感度ISH法を確立する。日本紅斑熱の症例はすでに確保しており、以前、本学に提出した医学研究倫理審査委員会の書類は承諾を得ている。日本紅斑熱リケッチア対象ISH法が確立したのち、SFTS症例での交差反応を確認する。SFTS virus対象ISH法による日本紅斑熱症例で交差反応が生じないことはすでに確認済みであるため、本法の成功によって、各ターゲットに特異的な検出系となりうる。 すべてのデータ解析後、今年度内に成果発表と英文論文を作成する。
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Causes of Carryover |
以下に示す3項目を遂行するため、平成27年度において予算が必要である。 1) SFTS virus検出のための高感度ISH法および免疫染色の確立には成功したが、リアルタイムRT-PCRは遂行できていないため。2) 同じダニ媒介感染症である日本紅斑熱リケッチアに対する検出系を確立するため。3) 電顕レベルで病原体を確認して、今回確立した検出系の特異性を確認するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究費の大半は、実験消耗品にあてる。高感度ISH法によるSFTS virus検出のためのLNA/DNAキメラプローブとAT tailingプローブをメインに購入する。さらに、日本紅斑熱リケッチア対象プローブもあわせて追加購入する。プローブの設計は、SFTS virusの場合に準じて作製する。高感度ISH法では、市販のチラミド増感試薬(Dako社製CSAII kitおよびGen point)を検出キットとして採用しているため、不足分を追加購入する。ISH法、免疫染色およびリアルタイムRT-PCRは、前年度の試薬を引き続き使用する。組織切片作製のための試薬・用品、ISH法用試薬・器具、免疫染色用試薬・器具、電顕用試薬・器具、リアルタイムRT-PCRのためのホルマリン固定パラフィン切片からのRNA抽出キット、RT-PCR用試薬・器具、PCRプライマー・プローブを適宜追加購入する。 学会発表のための国内旅費、英文論文の校正・校閲を外部依頼するための謝金、印刷費も必要である。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] SFTSの病理2015
Author(s)
塩竈和也、堤 寬
Organizer
第7回リケッチア症臨床研究会
Place of Presentation
滋賀県立県民交流センター・ピアザ淡海
Year and Date
2015-01-10 – 2015-01-11
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