2015 Fiscal Year Research-status Report
肝再生および肝腫瘍形成におけるJNK経路の意義とその制御機構
Project/Area Number |
26860255
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
大塩 貴子 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80723238)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肝臓 / 肝再生 / 細胞増殖 / 細胞運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレスや炎症性サイトカインによって活性化されるMKK7は,MKK4と協調してJNKをリン酸化し,細胞増殖や生存などに影響を与える.MKK4をノックダウンするとMKK7が活性化し,肝細胞増殖や肝再生が促進されることが報告されている. しかし我々は前年度までの研究により,単層培養系でMKK7 ノックアウト (KO) 初代肝細胞をEGF刺激すると,細胞周期の進行がむしろ早まることを明らかにした.さらに,肝特異的MKK7 KOマウスを用いた検討で,MKK7 KOは部分肝切除や急性四塩化炭素傷害後の肝細胞増殖に影響を与えず, 四塩化炭素傷害後の組織修復を遅延させることを見出している. そこで今年度,我々は肝細胞におけるMKK7の役割をさらに検討するため,MKK7 KOが初代培養肝細胞の三次元形態形成に及ぼす影響を調べた.対照肝細胞スフェロイドのコラーゲンゲル内三次元培養では,著明な樹枝状形態形成が誘導され,これはTNF-αやTGF-βを添加することによりさらに促進された.一方,MKK7 KO肝細胞スフェロイドは突起の伸長が弱く,TNF-αやTGF-βに対する反応も抑制されていた.この作用機序を明らかにするために,コラーゲンゲル内培養肝細胞のマイクロアレイ解析を行った.GO解析の結果,MKK7 KOでは細胞増殖関連遺伝子群の発現が亢進し,急性炎症反応に関わる遺伝子群の発現が低下していることが明らかとなった.さらに,肝細胞スフェロイドの突起の伸長に関与する遺伝子を同定するために,突起の伸長と遺伝子発現パターンに相関がみられる遺伝子を探索したところ,細胞運動に関連する遺伝子(Tagln,Glipr2, Plauなど)が同定された. 以上より,MKK7はこれらの候補遺伝子の発現を介して細胞運動を促進し,肝傷害後の組織修復に関与している可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は初代培養肝細胞の三次元培養でのMKK7の影響を検討し,MKK7 KOでは細胞運動が抑制されていることを明らかにした.さらに,マイクロアレイ解析により,MKK KOによって発現が低下し,細胞運動に関与する候補遺伝子 (Tagln, Glipr2, Plau等) を同定することができた.特にPlau KOマウスでは,四塩化炭素傷害の回復が遅延するという,MKK7 KOマウスと同様の報告があり,MKK7 KOによる細胞運動低下にPlauの発現が関与している可能性が考えられる.以上の理由により,本年度の研究は順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
MKK7 KOによって発現が低下し,細胞運動を制御すると考えられる候補遺伝子 (Tagln, Glipr2, Plau等)をクローニングし,MKK7 KO初代培養肝細胞に過剰発現させる.そして,その細胞スフェロイドをコラーゲンゲル内で三次元培養し,樹枝状突起の形成能がレスキューされるかを検討する.突起の伸長をレスキューできた遺伝子に関しては、MKK7 KOマウスの肝細胞に過剰発現させ,四塩化炭素傷害による回復が促進されるのかを検討する.
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