2014 Fiscal Year Research-status Report
全身性慢性炎症・早老症の新規モデルマウスの確立とその病態解析
Project/Area Number |
26860263
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川瀬 良太 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (60727650)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 早期老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Progranulin(PGRN)/ApoE double KOマウス(DKO)が ①全身性慢性炎症・早老症モデルになりうるのか および②その病態の解明を目的にしている。 ①:この1年で、通常飼育にてDKOおよびApoE KOにおいて目視できる表現型である(ⅰ)手足の関節腫脹(関節炎?)(ⅱ)皮膚炎 の発生率に関して検討を行った。 (ⅰ)手足の腫脹はDKOのみ(♂♀とも)に認められた。40週齢以降では半数以上に認めた。(ⅱ)皮膚炎に関してもDKOの発生率は有意に多く、♂は20週齢以降8割以上・♀でも20週以降で緩やかに上昇し、60週齢には♂同様の割合になった。ApoE KO♂はDKO♀と同様の経過、ApoE KO♀はさらに高齢になってから発生を認めた。以上よりDKOはApoE KOマウスに比して有意に炎症が起こりやすいと考えられる。 ②:病態の解明 a)TNFRアゴニスト以外のPGRNの機序の検討:TNFR1/TNFR2 KOマウスの腹腔マクロファージを採取培養し、rPGRNを添加しAktシグナルを検討した。PGRNよってAktのシグナルが入ることはすでに報告がされているが、今回の検討によってもrPGRN添加濃度依存的にAktのリン酸化が増えており、TNFRを介さないPGRN作用経路があることが明らかになった。 b)マクロファージから分泌されるPGRNの役割の検討 :骨髄移植実験を行っており、放射線を当てたApoE KOにDKOの骨髄移植した群がApoE KOの骨髄移植をした群に比して有意に動脈硬化が増悪していた。マクロファージから分泌されるPGRNが抗動脈硬化作用に重要であることが示された。 c)PGRNがHDLと結合している意味の検討:コレステロール引き抜き能の検討では、PGRNが結合していないHDLは、PGRNが結合しているHDLに比して、引き抜き能が有意に低下していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①に関しては、手足の関節腫脹や皮膚炎といった表現型の発生率の概要はわかってきたが、さらにnを増やして検討していく必要がある状態である。さらに、詳細な形態学的検討によって、実際に炎症がどのように起こっているのかを検討していく。現在、血液サンプルからqPCRを用いてテロメア長の長短の検討ができる準備も整ってきているので、テロメアの検討を行うことで老化が早期に起こっているのかという検討もできると考えている。 ② a)これまでの検討でPGRNの作用機序としてTNFR以外の存在は示すことができたと考えている。 b)これまでの骨髄移植の実験でマクロファージから分泌されるPGRNがPGRNの抗動脈硬化作用のなかで重要であることを見出しているが、現在今までの検討に加えて、放射線を当てたDKOに、ApoE KOもしくはDKOマウスの骨髄を移植するという実験も施行しているところであり、この検討でさらにマクロファージから分泌されるPGRNの意義を見出せると考えている。 c)これまでの検討で、HDLに結合しているPGRNが欠損するとコレステロール引き抜き能が有意に低下することがわかってきた。これからは、抗酸化能や抗炎症能に関しても検討を行っていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
① 現在飼育しているマウスの表現型を検討することで、nを増やしていく。形態学的・病理学的な検討も同時に行っていく。実際に手・足の関節の腫脹が起こっているところ・皮膚炎などが起こっているところがどのような形態学的変化を起こしているのかを検討し、PGRNが欠損することに伴う変化の意義を見出す。形態学的検討では老化性色素と呼ばれるリポフスチンの沈着に関しても併せて検討する予定である。大阪大学整形外科の協力も得て、手足の関節のレントゲン写真やmicro CTなどの撮影も予定している。またqPCRでテロメア長の検討をおこなうことで、実際に老化とどのような連関があるかを見出していく。最終的には、全てのマウスを含めた生存曲線を作成する予定である。
② b) 現在施行している骨髄移植実験であるが、動脈硬化病変の検討に加えて、そのマウスから採取したサンプルを用いて老化や炎症に関連する因子の検討を行っていく。放射線を当てたDKOマウスに対してApoE KOの骨髄もしくはDKOの骨髄を移植する検討も始めており、その結果もあわせて報告できる予定である。 c) HDLのコレステロール引き抜き能に加えて、PGRN(+)-HDLとPGRN(-)-HDLを用いてPON-1活性の測定をおこない抗酸化能の検討を行う。また、抗炎症能に関してはPGRN(+)-HDLもしくはPGRN(-)-HDLを添加することで炎症性サイトカインの発現に影響があるのかを検討する予定である。
|