2015 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病の新規発症機序:β細胞接着分子CADM1の細胞外切断
Project/Area Number |
26860267
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
米重 あづさ 近畿大学, 医学部, 助教 (70586750)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞間接着分子 / 細胞死 / プロテアーゼ / 耐糖能 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
Cell adhesion molecule 1 (CADM1)は肺呼吸上皮細胞や膵島内分泌細胞に発現する細胞間接着分子で、細胞の形態・極性維持や細胞間情報伝達を司る。前年度は、2型糖尿病膵におけるCADM1の発現異常の実態を明らかにし、ヘモグロビンA1c値との相関を報告した。今年度は肺呼吸上皮細胞に発現するCADM1に着目し、間質性肺炎を対象に研究を実施した。特発性間質性肺炎(急性、非特異性、器質化、通常型)の剖検肺を収集し、CADM1の蛋白質発現量を解析したところ、全ての組織型においてCADM1の細胞膜直上での酵素的切断(shedding)が亢進しており、非特異性間質性肺炎では全長型CADM1の発現量が低下していることが分かった。抗1本鎖DNA抗体を用いた免疫染色により、肺胞上皮細胞中のアポトーシス細胞の比率を算出してCADM1の発現変化との相関解析を行ったところ、有意な関連性が見られた。ヒト肺上皮細胞株NCI-H441またはA549細胞においてsiRNAにより全長型CADM1の発現量を抑制したところ、アポトーシスが誘導されることが分かった。以上のことから特発性間質性肺炎においてCADM1のsheddingが亢進し、全長型の低下を介して肺胞上皮細胞死に寄与することが示唆された。一方、2種類のプロテアーゼのshedding作用によりCADM1の細胞内断片が生成されることが知られている。そのCADM1の細胞内断片の蛍光標識合成ペプチドをNCI-H441またはラット肺上皮細胞株RLE-6TNに細胞内導入したところ、CADM1の細胞内断片はミトコンドリアに局在してアポトーシスを誘導することを実験的に示した。筆者らは慢性疾患における実質細胞の細胞死においてプロテアーゼ活性上昇による接着分子のshedding亢進が関わることを示し、新たな発症機序を提案した。
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