2014 Fiscal Year Research-status Report
次世代シークエンサーが明らかにしたJCウイルスゲノム変異とPMLの病態
Project/Area Number |
26860270
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
高橋 健太 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (80711689)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 進行性多巣性白質脳症 / JCウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
進行性多巣性白質脳症 (progressive multifocal leukoencephalopathy) はヒト免疫不全ウイルス感染や臓器移植後など主に免疫抑制状態にある患者においてJCウイルス (JCV) により惹起される脱髄性疾患である。近年は多発性硬化症やクローン病の治療薬として使用されるnatalizumabなどの抗体医薬によるPMLの発症が報告され、抗体医薬使用時の副作用としてPMLへの関心が急速に高まっている。PMLに対する有効な治療法は未だに確立されておらず、その開発が強く求められている。 国立感染症研究所感染病理部において、PMLの臨床検体6例より検出されたJCVのゲノムを次世代シークエンサーにて解析したところ、6例全例に共通して、JCVのT抗原内にアミノ酸置換を伴う変異を有することが明らかとなった。実際のPML検体由来のJCVに特異的なコーディング領域の変異はこれまで知られておらず、変異はウイルスの全ポピュレーションの3%程度しか存在しないが、検索した全てのPML症例に共通して存在する変異であることから、PMLの病態に極めて重要な関与をしていると考えられる。本研究では、次世代シークエンサーにて明らかとなった変異型T抗原のJCV増殖およびPML発症に関する影響について、in vitroの系で分子生物学的手法を用いて解析を行う。 平成26年度はまず、PML検体より検出されたJCVの次世代シークエンサー解析で明らかとなった変異を有するT抗原発現ベクターおよびウイルスを作製し、JCV感受性ヒト神経芽細胞腫細胞株IMR-32に変異型T抗原発現ベクターをトランスフェクション、また変異ウイルスの感染実験を行うことで、変異型がJCVタンパク質の産生やウイルス増殖に与える影響について、解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PMLの臨床検体より検出されたJCVを次世代シークエンシンサーにより解析することで明らかとなった変異型T抗原発現ベクターおよびウイルスを作製し、平成26年度は、変異型がJCVタンパク質の産生やウイルス増殖に与える影響について、解析を進めている。初年度として実際に実験を開始するにあたり、遺伝子組換え実験についての手続きおよび審査に時間を要したことで、変異型T抗原を発現するベクターおよび変異型JCVを作成するための実験の開始に遅れが見られたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
作製した変異型T抗原発現ベクターを、IMR-32にトランスフェクション、あるいは作製した変異ウイルスの感染実験を行うことで、変異型がJCV増殖に与える影響について、引き続き野生型と比較した解析を行う。また、次世代シークエンシングにより存在が明らかとなった変異株のポピュレーションはおよそ3%であったが、検索した全ての症例において、新規の共通したT抗原の変異が発見された意義は大きいと考えられ、quasi-speciesの形で変異株が実際のPML脳に存在することで、変異型T抗原がPMLの何らかの病態を修飾している可能性や、ウイルス増殖を促進している可能性などが考えられる。従って、PMLの病態形成に与える影響について、変異株を野生株と共感染させた実験系でウイルスタンパク質の増殖やウイルス増殖に与える影響についても検討し、実際のPML脳に可能な限り近い系での実験を行う。
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Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが平成27年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のとおり。また経費の節減により生じた平成26年度の残額については、次年度の研究費と併せ上記研究のために必要な消耗品、試薬費として使用する。
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