2014 Fiscal Year Research-status Report
マラリア原虫の遺伝子点変異による薬剤耐性獲得様式の解明
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26860277
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
彦坂 健児 帝京大学, 医学部, 助手 (30456933)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マラリア / Plasmodium / 薬剤耐性 / アトバコン / ミトコンドリアゲノム / 動物感染モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリア原虫の薬剤耐性の獲得は、アミノ酸変異を伴う塩基配列の点変異によって引き起こされることが多くの治療薬で報告されている。しかし、その点変異が惹起される機序は明らかになっていない。本研究は、実験室レベルで点変異による薬剤耐性出現を再現できるアトバコン投与マラリア感染マウスをモデルとし、マラリア原虫の薬剤耐性獲得機序を解明することを目的としている。 アトバコンは、マラリア原虫のミトコンドリアゲノムにコードされているシトクロームb(cob)の点変異によって耐性が惹起されることが知られているマラリア治療薬の一つである。本年度は、げっ歯類マラリア原虫(Plasmodium berghei)感染マウスのアトバコン溶液の自由飲水による薬剤耐性獲得モデルの確立に向けた検討を行った。P. berghei感染マウスの飲用水に0.05、0.5、5、25および250 μg/mlの濃度となるようにアトバコンを溶解し、感染率が1~3%となった時点で、10日間、それぞれのアトバコン濃度の溶液を3匹ずつのマウスに自由飲水させた。その結果、5 μg/mlアトバコン投与群3匹のマウスのうち1匹のマウスにおいてアトバコン投与開始後13日より感染率の上昇が確認された。ここで増殖したP. bergheiはアトバコン耐性株であると予測されたので、cobの全塩基配列を決定したところ、850番目のGがTに変異していることが確認された。この変異はアミノ酸変異を伴う変異(V284F)であり、アトバコン耐性に関連することが既に知られている。以上の結果は、5 μg/mlアトバコンの自由飲水がP. bergheiの薬剤耐性獲得モデルとして用いることができることを示唆する。また、本年度はここで得られたDNAサンプルの次世代シーケンサーによる塩基配列の決定も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、げっ歯類マラリア原虫(Plasmodium berghei)のアトバコン耐性獲得モデルを確立することができた。このモデルを用いれば、アトバコンの標的遺伝子であるcobの塩基配列に、どのように変異が入るのかを詳細に解析することが可能となる。また、P. berghei感染マウスに5 μg/mlのアトバコンを投与した群とアトバコンを投与していない群より抽出した原虫DNAの次世代シーケンサー(Ion PGM)による塩基配列の決定を行っており、ミトコンドリアゲノム上に数カ所の一塩基多型(SNPs)が存在することを確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に実施した研究によって得られた結果より、アトバコンを投与したP. bergheiのミトコンドリア(mt)ゲノムの塩基配列に一塩基多型(SNPs)がいくつか存在することが明らかとなった。今後は、アトバコン投与の有無によって、mtゲノム上の変異箇所および変異の数に差があるのかどうかを確認する。ここで得られた情報をもとに、まずは、アトバコンを投与していない群の原虫mtゲノムがヘテロな状態で存在しているのかどうかを確認する。これは、原虫mtゲノムの全長(6 kb)を大腸菌でサブクローニングし、得られたプラスミドDNAをクローナルな対照サンプルとして次世代シーケンサーで解析し、比較する。さらに、アトバコン投与群との比較によって、アトバコンが塩基配列の変異を促進しているのかどうかを確認する。最終的には、アトバコン投与後の経時的なサンプリングを行い、引き起こされる塩基配列の変異の動向を解析し、マラリア原虫の薬剤耐性化機構について明らかする予定である。
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Causes of Carryover |
論文投稿に関わる予算として計上していた。研究推進の過程でランクの高い論文雑誌に投稿できることが期待され、データの追加を行うべく論文投稿を延期した。そのため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文としてまとめるのに必要なデータを追加し、ランクの高い論文雑誌に投稿する際の諸費用として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)