2014 Fiscal Year Research-status Report
ヘリコバクター・ピロリ病原因子CagAによるCsk撹乱の構造生物学的解析
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26860284
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 剛瑠 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10722209)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タンパク質複合体構造解析 / タンパク質複合体機能解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ピロリ菌病原因子CagAが宿主細胞内において発揮する病原機能を試験管内で解析するため、チロシンリン酸化型組換えCagAタンパク質ならびにCskの大腸菌発現系ならびに精製法を構築した。精製したリン酸化CagAタンパク質ならびにCskを用い、CagAがチロシンリン酸化依存的にCskと物理的に直接結合することを明らかにした。CagAはチロシンリン酸化部位である複数の異なるGlu-Pro-Ile-Tyr-Ala(EPIYA)サイトを持つことから、これらのチロシン残基をフェニルアラニン置換した変異型CagAを用いることにより、CagA-Csk複合体形成に深く関わるEPIYAサイトを同定した。CskはCagAと結合することにより酵素活性が異常亢進し、生理的基質であるc-Srcの530番目のチロシン残基に対するリン酸化能が顕著に増加することを明らかにした。このことからCagAによるSrcファミリーキナーゼの不活性化は、CagAとの直接的な結合により誘導されるCskの活性亢進によるものであることが強く示唆された。 チロシンリン酸化CagAペプチドによってもCskのキナーゼ活性が亢進することを見出した。ペプチドとCskとの複合体の結晶化スクリーニングを行い共結晶の作成条件を確立し、X線結晶構造解析により複合体構造を決定することに成功した。Cskの活性亢進機構は未だ不明な点が多く、解明した立体構造に基づいて適宜各種変異体等を作成しCskの病態生理学的な機能制御機構を詳細に明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CagA-Csk複合体の共結晶化は、全長CagAもしくはそれに準ずるコンストラクトを用いて平成26年度中に行う予定であった。共結晶化に適したリン酸化CagAの調製法確立に時間を要したため、並行してリン酸化CagAペプチドを用いた共結晶構造の決定を試みた。この代替法による構造解析に成功しており、平成26年度の研究計画として設定した項目に概ね沿った進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の計画として設定した項目に基づいて研究を推進し、本研究課題の目的達成を目指す。 現在はCagAタンパク質の調製法を改善しているため、当初の平成27年度研究計画と並行して、全長またはそれに準ずるチロシンリン酸化CagAを用いたCagA-Csk複合体の構造解析を行う。
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Research Products
(3 results)