2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26860287
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
油谷 雅広 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (20648810)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 細菌毒素 / ボツリヌス症 / 食中毒 / 感染機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、宿主消化管内においてボツリヌス神経毒素複合体が毒素成分と無毒成分に解離するか否かについて解析を進めている。 マウス小腸上部を結紮し、貯留した腸液を得た。このマウス腸液を含む弱アルカリ性緩衝液中(pH 7.0 - 7.8)では、ボツリヌス神経毒素複合体(B16S毒素)は毒素と無毒成分に解離せず複合体を維持していることを明らかにした。次いで、マウス腸液を種々の方法で分画し、解離阻害活性を示す画分から責任分子を同定した。同定分子を含まないマウス腸液では解離阻害活性が失われていることを確認した。 さらに、トランスウェルを用いて培養・作製したCaco-2 monolayerに対するB16S毒素分子の結合・局在様式を、毒素成分と無毒成分それぞれに対する抗体を用いた蛍光免疫染色法によって共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。B16S毒素は無毒成分中に含まれるヘマグルチニンの糖鎖結合活性によってCaco-2細胞膜上に結合することが分かっている。頭頂側の培地がMEM培地(pH 7.4)単独の場合、Caco-2細胞膜上には無毒成分を示すシグナルしか観察されなかったことから、毒素成分は弱アルカリ性の培地中で解離していると考えられた。これに対し頭頂側MEM培地(pH 7.4)にマウス腸液、あるいは同定分子を添加した場合、Caco-2細胞膜上には毒素・無毒両成分のシグナルが観察され、細胞膜上に共局在している様子が観察された。このことからボツリヌス神経毒素複合体は、同定した解離阻害分子の存在下では弱アルカリ性環境中であっても毒素成分と無毒成分の結合が維持され、単一分子として挙動しうることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス腸液がボツリヌス神経毒素複合体の解離を阻害することを確認し、責任分子を同定した。同定分子とボツリヌス神経毒素複合体の相互作用をBiacoreを用いて検出しようと試みているが、相互作用のパラメータを明確に求めるための条件検討が難航しており、現在のところ良好な結果を得るには至っていない。申請時、平成26年度中に相互作用パラメータを求める計画としていたが、この点でやや遅れている。しかし、Biacoreによる解析と並行して、相互作用していることを確認するための代替法を講じており、こちらは良好な結果が得られていることから本研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度中の計画であった「ボツリヌス神経毒素複合体-解離阻害分子の相互作用パラメータ解析」を引き続き遂行する。Biacoreによる解析だけでなく、現在進行中の代替法による解析もさらに進展させ、いずれかの方法で相互作用について解析を進める。 また平成27年度には申請時の計画のとおり、同定分子による解離阻害の分子メカニズム、および、宿主腸管内でボツリヌス神経毒素複合体が解離する場合としない場合の経口毒性の違いを解析する。
|
Causes of Carryover |
実験計画の遂行にあたり販売会社の値引きキャンペーンなどを利用して物品を購入したところ、平成26年度末に次年度使用額が発生した。補助金をより有効に活用するべく、本金額は平成27年度に使用することとした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には大腸菌によるリコンビナントタンパク質を用いた実験を行う予定である。次年度使用額はリコンビナントタンパク質生産にかかる遺伝子実験用汎用酵素の購入費に充てたい。
|