2014 Fiscal Year Research-status Report
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26860288
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 佳司 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (60706216)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ボルデテラ属細菌 / 気管支敗血症菌 / I型分泌機構 / 付着因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ボルデテラ属に分類される主な病原細菌である百日咳菌と気管支敗血症菌は遺伝学的に極めて近縁で、各遺伝子の相同性は高く、主要病原因子も菌種間でほとんど全て共有されていることが明らかになっている。しかし、これらの菌種それぞれの宿主特異性や感染病態は明らかに異なる。この違いは宿主に感染した際に発現する細菌側の遺伝子パターンの違いに依拠すると考え、申請者の所属する研究室では、宿主気道に感染している気管支敗血症菌が発現する遺伝子を網羅的に同定する方法 (in vivo expressed-tag immunoprecipitation: IVET-IP)法を開発し、ラットへの感染中に発現量が更新する289の遺伝子領域を気管支敗血症菌から同定した。その遺伝子領域の中から、宿主感染中に大きく発現が上昇するbkn06という遺伝子に着目した。本遺伝子はI型分泌シグナル、細胞傷害毒のモチーフを含むRTXドメイン、さらにインテグリンで認められるIg繰り返し配列からなるタンパク質 (Bkn06)をコードしている。bkn06は百日咳菌には存在しないことから、気管支敗血症菌の特異的な病原性に関与すると考えられる。Bkn06は、遺伝子上流の転写因子luxRによって発現を制御され、さらに上流に存在する遺伝子群によって構成されるI型分泌装置によって菌体外へ分泌されることが明らかになった。Bkn06を発現する気管支敗血症菌は呼吸器系上皮細胞に対して細胞傷害性を示さなかったが、Bkn06欠失株を用いた解析によって、Bkn06はプラスティック表面への接着に必須であることが明らかになった。以上のことから、新規付着因子Bkn06は標的組織や環境中での菌体の定着に寄与している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気管支敗血症菌が宿主に感染する際に産生するBkn06は、他菌種で保存されているドメイン構造を有するものの、その詳細な役割については不明であった。今回、細胞レベルにおいてBkn06の機能解析を行い、本タンパク質が付着因子として働く可能性を初めて明らかにした。また、Bkn06の発現および分泌機構を機能ドメインおよびbkn06近傍の遺伝子の情報に基づいて詳細に明らかにした。菌体外に分泌されたBkn06が菌体の標的への付着に関与するという事実は、次年度への研究計画を考える上で有益な情報であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
気管支敗血症菌はバイオフィルムを形成することが報告されている。また、バイオフィルムの形成に菌体の付着因子が関与することが知られている。予備検討の段階において、Bkn06が気管支敗血症菌のバイオフィルム形成に関与すると考えられる結果が得られている。次年度は付着因子としてのBkn06の機能を、バイオフィルム形成の関与を詳細に解析することによって明らかにする。 概要の項で述べた様に、bkn06は百日咳菌には存在しない。気管支敗血症菌と百日咳菌の宿主特異性の違いに、Bkn06が関与しているかを検討する。具体的には、気管支敗血症菌においては感染が成立するが、百日咳菌では成立しないラットを用いた感染モデルを利用して、bkn06をプラスミドで相補した百日咳菌がラットへの感染維持能を獲得するかを確認する。
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Causes of Carryover |
サンプル調整法の工夫などにより、当初計画より経費の節約ができたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は実験動物を用いた解析を行う予定であるので、その購入費用に充てる。また、得られた実験結果の科学的再現性を検証する目的のための試薬購入に利用する。
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