2014 Fiscal Year Research-status Report
効率的なマダニ体内伝播に係わるボレリア属細菌新規因子の同定
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26860291
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
高野 愛 山口大学, 獣医学部, 准教授 (90700055)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マダニ媒介性感染症 / ボレリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、軟ダニであるOrnithodoros moubataに実験的に計5種のボレリアを接種し、マダニ体内(唾液腺内、体腔液内)での生存率の変化を経時的に分離培養にて確認すると同時に、各臓器からのRNA抽出を行なった。また、2週間後も菌が検出された株については、2ヶ月以上経過後にその生存の有無を確認した。その結果、回帰熱群ボレリアが長期間(2ヶ月以上)マダニ体内で維持されることを確認した。他方、ライム病群ボレリアは接種後早期に体内から排除され、爬虫類関連ボレリアは一部個体において1~2週間程度は感染が維持されるものの、その後全て排除されることが明らかとなった。菌の排除は体腔内において顕著に観察され、回帰熱群以外のボレリアは全て1週間以内に体腔内から消失していた。本実験は複数回行ない、再現性を確認した。さらに、マダニ体内での遺伝子発現解析が本研究計画では最も重要な実験であることから、効率的な解析方法を選ぶために、上記実験にて複数種のボレリアを接種したマダニとコントロール群の各臓器から個別にRNAを抽出し、共同研究者から情報提供されたマダニ免疫関連遺伝子についてその発現解析を行なった。その結果、自然免疫に関連する遺伝子群の転写因子が発現していること、ボレリア接種群においてその発現量に多少の違いが見られることが明らかとなった。ボレリア側の遺伝子群の抽出では、合計5種以上のプラスミド配列を含むボレリア属細菌ゲノム配列を用いた比較解析により、回帰熱群ボレリア特異的と推定される遺伝子群を100以下にまで絞り込むことが出来た。現在特異的プライマーの設計を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
接種実験により、菌株毎、臓器毎の生存率の違いを明らかにできた。さらに、マダニ側免疫関連遺伝子も発現に変化があったことから、遺伝子発現解析は順調に進捗している。他方、予備実験にて行なった一部遺伝子の発現解析において、発現量が少ないために、conventional RT-PCRでは検出感度が問題となることが明らかとなった。現在、リアルタイムPCRによる検出系に変更し、条件検討を行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は抽出を行なった各遺伝子について、マダニ体内と培地中の発現量の違いをRT-PCRにて確認する。発現量の少ない遺伝子が有る事を想定し、リアルタイムPCRを用いた高感度の検出系を用いて検出を行なう予定である。 同時に、発現に顕著な違いが見られた遺伝子群について、ライム病群ボレリアの一種であるBorrelia burgdorferi に候補遺伝子を導入する形質転換株の作成に着手する予定である。
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