2014 Fiscal Year Research-status Report
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26860301
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅田 謙治 京都大学, ウイルス研究所, 研究員 (10650616)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | HTLV-1 / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1: HTLV-1)は長い潜伏期間の後に成人T細胞白血病(ATL)や慢性炎症性疾患を惹起する。日本ではHTLV-1キャリアは南九州を中心に108万人存在し、その約5%がATLを発症すると推定されている。これまでの研究で細胞の腫瘍化にはTaxとHBZ(HTLV-1 bZIP factor)が重要な役割を持つことが示唆されている。生体内でTax発現細胞は細胞障害性T細胞(CTL)の標的となり、排除される。HTLV-1の長期潜伏感染後、最終的にTax発現が低下した細胞がクローン性増殖し、ATLを発症すると考えられている。一方でHBZは恒常的に発現している。 これまで成人T細胞白血病(ATL)に関する治療として血液幹細胞移植が一定の治療成績を上げてきたが、血液幹細胞移植は適応が限られており新たな治療法の確立が急務とされてきた。これまでにATLに対する新たな治療法としてはHTLV-1抗原であるTaxを用いた樹状細胞療法やATL細胞で発現が増加するケモカインレセプター(CCR4)に対するヒト化抗体療法などが開発されてきた。本研究では新たな標的治療としてHTLV-1抗原であるHBZを用いる。同じHTLV-1抗原であるTaxはATL患者の約半数で発現が消失している為に全例での治療効果を期待することは難しかった。一方でCCR4はTh2や制御性T細胞も同様に発現する為に生体への悪影響も懸念される。 本研究では全ATL患者で発現が確認されるHBZをHTLV-1抗原として用いて、腫瘍免疫で重要な役割を持つ細胞傷害性T細胞(CTL)が認識するHBZ epitopeを探索することを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で組換えワクシニアウイルスを用いた動物実験でHBZ特異的CTLが認識するepitopeの候補としてHBZ61-80、HBZ109-128、HBZ145-164、HBZ157-176を同定している。本年度は特にHBZ157-176に関する詳細な解析を行った。 それらの候補ペプチドはHBZ免疫マウスでのCD8T細胞を活性化させた。次にそれらのペプチドによるCD4T細胞活性化の誘導能に関して調べた。HBZ発現ワクシニアウイルスを免疫したC57BL/6の脾細胞はCD8T細胞を除去後、それらの候補ペプチドで刺激した。ペプチド特異的CD4T細胞の活性化はInterferon-gamma(IFN-γ)産生をEnzyme-linked immunospot assay (ELISPOT assay)で測定することにより判定した。それぞれのIFN-γ産生はHBZ61-80:34 spots、HBZ109-128:14 spots、HBZ145-164:63 spots、HBZ157-176:550 spotsであった。HBZ157-176はCD4/CD8T細胞の両方を活性化出来る優れたペプチドである結果が得られた。 一方でHBZペプチドワクチンの可能性を想定し、HBZ157-176をマウスに接種し、特異的T細胞を測定した。ΗΒΖ157-176 はアジュバントCpG(ODN1826)と混合後にC57BL/6の皮下に3回接種後に脾細胞での特異的T細胞をIFN-γ ELISPOT assayで測定した。特異的なT細胞の反応は、PBS:0 spots、CpG:0.5 spots、HBZ157-176+CpG:8.4 spotsであった。HBZ157-176とCpGの組み合わせでは効率にHBZ特異的T細胞を誘導出来たことから、本ペプチドはHBZ特異的CD4/CD8T細胞を誘導出来る優れた配列であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験ではΗΒΖ157-176は宿主にHBZ特異的CTLを誘導出来ることマウスで示した。次年度ではヒト細胞でのΗΒΖ157-176を用いた解析を行う予定にしている。 (1)ΗΒΖ157-176によるHBZ特異的ヒトCTL lineの樹立。遺伝子組換えワクシニアウイルスやペプチドワクチンを用いた際、ΗΒΖ157-176に反応するT細胞集団が検出出来た。次に健常人からHBZ特異的CD8T細胞の誘導を行う。この実験ではHTLV-1感染で防御的に働くアリル(HLA-A2/A24)の両方若しくは一方を持つ健常人のCD8T細胞を使用する。ドナーCD8T細胞はΗΒΖ157-176をパルスした樹状細胞との共培養によってHBZ特異的CTLを誘導する。誘導されたHBZ特異的CTLは自己由来の不死化B細胞株(BLCL)やPHA刺激リンパ球などを用いて再刺激を行い、サイトカイン産生能を評価する。 (2)ΗΒΖ157-176に含まれるHBZエピトープの探索。ΗΒΖ157-176を使用してHBZ特異的CTLが誘導出来た場合、ΗΒΖ157-176内に存在するだろうHBZエピトープを決定する。その探索は「アルゴリズム解析に基づいた予測」と「N末とC末からのDeletionペプチド」の2通りの方法で行う。前者はコンピューターにより予測された配列からペプチドを作製し、エピトープを探索する。後者はΗΒΖ157-176のN末端とC末端の配列を2アミノ酸ずつ削った配列を用いてエピトープを探索する。
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