2014 Fiscal Year Research-status Report
広域反応性ウイルス中和抗体のエピトープの構造に着目したワクチンのデザイン
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26860304
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Research Institution | 一般財団法人阪大微生物病研究会 |
Principal Investigator |
井上 雄嗣 一般財団法人阪大微生物病研究会, その他部局等, 研究員 (90548869)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ワクチン / ウイルス / インフルエンザ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)インフルエンザウイルスに対し広域な中和抗体を誘導するための戦略として、ウイルス表面抗原HAのうち、変異を起こしにくいStem領域が注目されている。しかし、この領域は外側に突き出ているHead領域の陰に隠れているため抗体自体が誘導されにくい。本研究では、このStem領域の構造に影響を与えることなく、露出度を上げる事によって広域中和抗体の誘導能を高めたワクチン抗原の構築に取り組んでいる。ここで用いる構造安定な組換えHA発現系の構築をおこなった。インフルエンザウイルスからHA遺伝子をクローニングし、三量体安定化や精製のためのタグ遺伝子を付加した上で、培養細胞発現プラスミドベクターに導入した。現在、発現条件を最適化し、精製の準備をおこなっている。 (2)実験動物への抗原投与によって得られた検体を用いてウイルス中和力価を評価するための試験系として、フォーカスカウント法の改良と最適化をおこなった。この試験系は、検体と混合して中和反応をおこなったウイルス液をMDCK培養細胞に感作させる。感染が成立した細胞のみを抗インフルエンザNP抗体で選択的にプローブし、染色を行い、感染細胞数の低下率からウイルス中和力価を評価する方法である。感染細胞数から感染のイベント数が直接的に得られる事や、感度が高いなどの利点がある。しかし、作業が煩雑である事や判定に体力を要するという難点があり、広く普及はしていない。本研究では、染色における免疫プローブ作業の見直しや自動カウントによってそれらの難点を克服し、簡便で信頼性の高い試験系に改良した。特に、ELISPOTリーダーを感染細胞の自動カウントのためにシステム最適化する事で目視カウントによる体力的・時間的負担がなくなったほか、目視カウントでは制限があったウイルス濃度の高い条件での中和反応が可能となり、信頼性の高いデータが得られるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題開始時から研究代表者の所属変更があり、受入機関での制度整備や実験環境の整備、各種申請等に期間を要した。そのため、本来計画していた実験の開始が大幅に遅れた。そこで、今後必要となる評価系の確立を前倒ししておこなう事になった。これに関しては、所属機関で既におこなわれている評価系の改良という形であったため、既存の実験環境を利用して早期に達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
組換えHA発現系の構築を完了し、精製したHAを用いてステム領域の露出度を増加させた抗原構築をおこなう。これをマウスに投与し、得られた血清等の検体や、免役個体から作製されたモノクローナル抗体を用いて、誘導された抗体のエピトープ解析をおこなう(エピトープ解析のツールとして、HA部分欠失体の発現系を構築中である)。また、同抗血清や単離抗体を用いてウイルス中和能についてin vitro解析し、中和能の広域性について評価する。また、免疫動物について感染実験を行い、防御効果について評価する。
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Causes of Carryover |
本研究課題開始時から研究代表者の所属変更があり、受入機関での制度整備や実験環境の整備、各種申請等に期間を要したため、主として計画していた研究の開始が大幅に遅れた。その代わりとして、次年度に実施するはずであった研究を前倒しして当該年度におこなうことになった。これらの研究にかかる費用が大きく異なるため、当該年度使用額に差が生じたのが主たる理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度に行う計画であった組換えHA蛋白質の発現条件と精製条件の最適化を行い、動物実験や免疫動物検体からの評価を行う。試薬・ディスポーザブル器具のほか、当該年度に実施しなかった実験動物の購入等で繰り越し額を使用する見込みである。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Human monoclonal antibodies derived from a patient infected with 2009 pandemic influenza A virus broadly cross-neutralize group 1 influenza viruses2014
Author(s)
Pan, Y., Sasaki, T., Kubota-Koketsu, R., Inoue, Y., Yasugi, M., Yamashita, A., Ramadhany, R., Arai, Y., Du, A., Boonsathorn, N., Ibrahim, M. S., Daidoji, T., Nakaya, T., Ono, K., Okuno, Y., Ikuta, K., Watanabe, Y.
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Journal Title
Biochem Biophys Res Commun
Volume: 450
Pages: 42-48
DOI
Peer Reviewed