2014 Fiscal Year Research-status Report
NS5A-ISDRアミノ酸変異がHCV複製と薬剤感受性へ与える影響の解明
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26860309
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
杉山 隆一 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (70714476)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | C型肝炎ウイルス / NS5A / インターフェロン / 薬剤感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はC 型慢性肝炎におけるインターフェロン (IFN) 治療効果に関与する C 型肝炎ウイルス (HCV) 非構造領域 (NS) 5Aに存在するIFN感受性規定領域 (ISDR) のアミノ酸変異が、HCVのライフサイクルに与える影響及びその作用機序を解析するとともに、どのような機序でIFN感受性を規定しているかについて明らかにすることを目的としている。 培養細胞で効率良く複製が可能なHCV株は遺伝子型2aのJFH-1株のみであることから、JFH-1株のNS5Aを、遺伝子型1bであるCon1株由来のNS5Aに置換した組換えウイルス (JFH1/5ACon1) とJFH1/5ACon1株のNS5A内のISDRに7つのアミノ酸変異を持つJFH1/5ACon1/i-7mutを構築した。これらの株のHCV-RNAを導入した細胞で、IFN-αの添加によるinterferon stimulated genes (ISGs) 発現を評価した結果、JFH1/5ACon1/i-7mutではIFN-α添加によりISGsの発現が有意に上昇したが、JFH1/5ACon1ではISGsの発現が抑制されていた。 近年、JFH-1株の構造領域は他の遺伝子型の株とでも置換可能であることが報告されていることから、Con1 株の構造領域とNS5A領域の両方を持ったキメラウイルスを作製し、それらの全長 RNAを培養細胞に導入することで、細胞内外のコア抗原量と感染力価の評価を行い、NS5A 領域のみ Con1 株を持つキメラウイルスで観察された感染性ウイルス粒子形成の阻害が保たれているかを検証した。その結果、ISDRに7つの変異を持つウイルスでは、培養上清中及び培養細胞内での感染力が著明に低下しており、NS5A領域のみがCon1株を持つキメラウイルスと同様に感染性ウイルス粒子形成が阻害されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HCVのレセプター分子が発現していない細胞 (Huh7-25細胞) を用い、ISDRの変異がHCVのライフサイクルに与える影響を詳細に評価した結果、ISDRに変異を持つウイルスは感染性ウイルス粒子の生成効率が低下していた。さらに、ISDR変異株を導入した細胞ではIFN添加によるISGsの発現が回復していた。これらの知見は、ISDRのアミノ酸変異によるHCVライフサイクルへの影響及びIFN感受性について説明できるものであり意義深いと考える。今後この得られた知見の作用機序について詳細に検討を行う。本年度の研究により、上記のような新しい知見が得られたことから、研究は順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた知見から、ISDRのアミノ酸変異はHCVの感染性ウイルス粒子生成の効率、さらにIFN添加によるISGs誘導に影響を与えることが明らかになった。そこで、今後はこれらの現象がどのように誘導されているのか、その機序を明らかにする。ISDR変異株導入細胞でNS5Aタンパク質を免疫染色することにより、ISDRに変異を持ったNS5Aタンパク質の局在を評価する。特に粒子形成の場として知られている細胞内脂肪滴及びISGs誘導に関与するJak-STAT経路関連タンパク質との共局在について検討を行う。
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Causes of Carryover |
次年度以降の研究計画において抗体等の高額な試薬の購入が考えられることから、本年度においては試薬の節約を行ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に分子生物学的試薬や器具、細胞培養や遺伝子導入、ウイルス感染実験を行うための試薬や器具などの消耗品を購入する。また研究成果発表のための学会出張用予算も計上したい。
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Research Products
(4 results)