2014 Fiscal Year Research-status Report
IL-33誘発性血管壁肥厚におけるIL-5産生ILC2と好酸球の役割
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26860319
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
生谷 尚士 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 客員講師 (40513718)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | IL-5 / ILC2 / Eosinophil / PAH |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では特定疾患である肺動脈性肺高血圧症の発症メカニズムを、これまでに無い新たな視点から解明することを目的としている。この疾患では閉塞性の肺動脈肥厚が高血圧の原因となるが、肺動脈の肥厚メカニズムは依然不明である。平成26年度は申請者らが開発した動物(マウス)モデルを用いた研究を行った。 当該モデルでは肺の免疫細胞に劇的な変化をもたらすため、それらの数的変化をフローサイトメトリー法で解析した。その結果、新規のリンパ球集団であるILC2という細胞と好酸球が著しく増加していることが判明した。このILC2はT細胞とともにIL-5を産生する主要な細胞として知られているが、T細胞を欠損する条件下でも肺動脈の肥厚が観察されたため、T細胞ではなく、ILC2が重要であると判断できる。IL-5を欠損する条件で検討したところ、肺動脈の肥厚は顕著に抑制されていた。そのため、ILC2から産生されるIL-5が肺動脈肥厚の原因となっている可能性が高いと考えられる。 続いてILC2の組織内局在を調べるため、蛍光免疫組織染色法で解析したところ、ILC2は肥厚している血管周囲に集積していた。さらに好酸球も同一の血管周囲に多数観察された。IL-5には好酸球を呼び集める機能があるが、IL-5を欠損させると予想通り好酸球も観察されなくなった。 これらの結果から、IL-5産生ILC2や好酸球が肺動脈性肺高血圧症の発症の引き金になっている可能性が示唆された。これまでにILC2と肺動脈性肺高血圧症との関連を指摘している報告は無く、異なる視点から発症メカニズムの解明に貢献できると考える。肺動脈性肺高血圧症の原因には複数の要素・因子が指摘されてきているが、ILC2は有力な治療の標的細胞となり得ると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は研究計画に沿っておおむね順調に推移した。平成26年度は肺動脈性肺高血圧症モデルにおいて免疫細胞、特にILC2の動態を解析することが主要な研究目的であったが、その数的変化や組織内局在に関して把握することに成功した。 遺伝子レベルの発現解析の進捗状況は若干滞っているが、平成27年度の早期に成果が得られる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の研究計画に沿って研究を遂行していく。研究に必要になる抗体や遺伝子欠損マウスなどの生物資源はすでに入手しているため、迅速に研究を開始できる体制は整っている。平成26年度に予定していた遺伝子発現解析を27年度の早期に完了させることに注力する。
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Causes of Carryover |
一部の研究(遺伝子発現解析)に遅延が発生したため、それに係わる経費を次年度に繰り越したことにより次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の早い段階で当該研究を行う予定である。
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Research Products
(4 results)