2014 Fiscal Year Research-status Report
インスリン抵抗性発症における腸管マクロファージFoxo1の機能的解析
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26860338
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
川野 義長 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80571463)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インスリン抵抗性 / Foxo1 / マクロファージ / 慢性炎症 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
高脂肪食負荷に伴う腸管の免疫変化を検討するために、C57Bl6/Jマウスに各週数高脂肪食負荷して腸管の表現型を解析したところ、高脂肪食4週早期の段階で炎症性腸管マクロファージの浸潤を認め、高脂肪食負荷に伴う腸管の慢性炎症の存在が示唆された。 高脂肪食負荷に伴うマクロファージを中心とした腸管の慢性炎症が全身の糖・エネルギー代謝に及ぼす影響を検討するために、腸管上皮特異的タモキシフェン誘導型CCL2欠損マウスとマクロファージ特異的CCR2欠損マウスを作製・解析した。2つの遺伝子改変マウスの代謝表現型の結果から、腸管上皮特異的にCCL2を欠損させると、CCR2陽性マクロファージの腸管への浸潤が抑制され、2次的に脂肪組織における慢性炎症が是正され、耐糖能およびインスリン感受性が改善する事を見出した。腸管の慢性炎症を是正することで肝臓のインスリン感受性が改善したメカニズムを調べたところ、門脈内の炎症性サイトカインおよび、腸管バリア機能の改善に伴う腸内細菌由来の内毒素が軽減しており、それらが一因と考えられた。以上より腸管上皮CCL2を欠損させると糖代謝およびインスリン感受性が改善する可能性があり、「高脂肪食負荷に伴う腸管上皮CCL2の分泌機構」を明らかにすることで、新しい糖尿病の治療標的になる可能性が示唆された。高脂肪食負荷に伴う腸管の慢性炎症の分子メカニズムを解明する為、腸管上皮の培養細胞であるHT29を用いて、各種脂肪酸およびLPSの刺激実験とJNK、NFKbをはじめとしたシグナル解析を行うと同時に、これまで我々がマクロファージの活性化調節を担う遺伝子として報告してきたPDK1, Foxo1に着目し。マクロファージ特異的PDK1, Foxo1遺伝子改変マウスを作成している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度解析予定の腸管上皮特異的CCL2欠損マウスとマクロファージ特異的CCR2欠損マウスの解析に関しては、研究実施計画に概ね沿う形で実験は進捗している マクロファージ特異的Ccr2欠損マウスは、高脂肪食10週においてインスリン感受性と耐糖能が有意に改善し、腸管マクロファージ浸潤の低下とIL1β発現の低下を認め、それに伴い門脈内IL1β低下、腸管バリア蛋白Claudin-1の発現増加と門脈LPS低下を認めた。一方で同時期の肝臓と脂肪組織における炎症性マクロファージに差異を認めなかった。これらのデータから腸管マクロファージ浸潤の抑制により全身のインスリン感受性が改善する可能性が示唆された。 腸管上皮特異的Ccl2タモキシフェン誘導型欠損マウスは、高脂肪食12週においてインスリン感受性が改善し、腸管マクロファージ浸潤抑制に伴い、脂肪組織の慢性炎症が是正された。 以上のデータより、腸管上皮Ccl2-腸管マクロファージCcr2の抑制により、門脈内の炎症性サイトカインの低下や腸管バリアの改善により、全身のインスリン感受性が改善する可能性がある事が示唆された。その研究実績は平成26年日本肥満学会で口頭発表を行い、若手研究奨励賞を受賞した。また平成27年の内分泌学会および糖尿病学会においても若手研究奨励賞の3次審査まで進んでいる状況である。平成27年度解析予定のマクロファージFoxo遺伝子改変マウスに関しては未だ作製段階であり、平成27年度の研究計画を勧めると同時に、平成26年度の研究実績に関して論文作製を行っている段階である
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Strategy for Future Research Activity |
腸管上皮Ccl2が全身のインスリン感受性の調節に重要である可能性がある事から、今後は高脂肪食負荷に伴う腸管上皮におけるCcl2分泌の調節因子およびその分子メカニズムを解明していく。現在は腸管上皮培養細胞HT29を用いて、各種脂肪酸(パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸)や腸内細菌内毒素LPS、活性酸素を用いて刺激実験を行い、腸管上皮Ccl2分泌調節に重要な刺激因子を同定すると同時に、腸管上皮細胞内における高脂肪食負荷時のシグナルに関しても解析を進めている。高脂肪食負荷に伴い、腸管の活性酸素濃度の上昇と、JNKシグナルの活性化を認める。腸管上皮細胞において脂肪酸刺激がJNKシグナルに影響を与えて、Ccl2分泌に関与するかどうか検討していく予定である。またこれまでに我々は、マクロファージにおける転写因子FoxO1がマクロファージ浸潤や活性化に重要である事を報告(Diabetes, 2012)しており、これらの遺伝子改変マウスにおいて腸管の表現型がどのように変化し、それらがどのように全身のインスリン感受性、糖代謝に影響を与えるかを検討していく予定である。現在、マクロファージ特異的PDK1欠損マウス、マクロファージ特異的Foxo1欠損マウス、マクロファージ特異的PDK1Foxo1欠損マウスを作製している段階である
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