2014 Fiscal Year Research-status Report
司法における証拠としてのゲノム研究と脳科学研究:各国の比較研究を基軸として
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26860344
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸田 聡一郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90619420)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 司法での証拠 / ゲノム研究 / 脳科学研究 / 裁判員制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度においては、おもに文献収集、他の研究者との情報交換に集中した。神経科学の側面からは、おもに脳神経画像の司法における使用の限界について、また、(証言者等の)記憶の信ぴょう性と司法との関係性について、考察を行った。この点に関しては、脳科学者も含む研究会を開催し、理解を深めた。ゲノム科学においては、前職の東北大学との繋がりを活かしながら、とりわけ全ゲノムシークエンス技術が司法において惹起する倫理的問題、とりわけ暴力傾向と遺伝子とがどのように関係しうるか、という、古いと同時に新しい問題に取り組んだ。さらに、裁判員制度において、どのような証拠が採択されやすく、逆に採択されにくいか、その実態について、全国的な調査を行う準備を行った。このことに加え、意図しないところで発見されてしまった被告人の遺伝的・脳科学的異常(偶発的所見)を、被告人に有利か不利かに関わらず、裁判員に伝えるべきか否か、その基準はどのようなものになるか、国内外の研究者と幅広く議論した。これらの成果は、平成27年7月の日本神経科学学会でポスター発表される予定である。本年度の成果を元に、次年度の達成事項(裁判員、裁判官が共に使用できる科学的証拠についてのたたき台づくり)に向けて、法曹界と科学コミュニティのメンバーに、国内外問わずインタビューを実施する予定である。最後に、哲学的な議論、とりわけ責任能力と自由意志について、本研究が貢献できる論点を整理中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は、基礎的な文献収集や、現状把握にとどまり、研究会、インタビューなどの実施について目標達成までには行かなかった。 また、アウトプットとしても、論文等の発表もなく、次年度への基礎固めという印象が強く、「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き国内外で研究会を開き、学会での人脈も利用しながら、詳しいインタビューの対象となる対象者を探し、記録を重ねていきたい。また、一般の方(裁判員になりうる方)にもインタビューを行うための準備を行う。専門家でのインタビュー項目、一般の方でのインタビュー項目を整理し、体系的な研究に繋げたい。26年度には行えなかった論文発表等のアウトプットも積極的に行う予定である。
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Causes of Carryover |
26年度においては実施状況が計画より遅れており、計画していた使用額を下回ったこと、また最終目標である裁判員用のワークシート構築に向けては、多くの工程(インタビューや分析、概念的分析)が必要とされていることから次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
基本的文献調査を行うための書籍費等に使用する。さらに裁判員制度を実施している諸国外への調査・インタビューを行う。国内外で一般の方のインタビューを行うために、謝礼金も発生する。国内においては、積極的に研究会を開催する。
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