2014 Fiscal Year Research-status Report
専門職連携における医療人としてのアイデンティティー形成過程の解明とその教育的応用
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26860345
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
今福 輪太郎 岐阜大学, 医学部, 助教 (40649802)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 専門職意識形成 / 多職種連携教育 / 医療者教育 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、医療人の「専門職アイデンティティー」と「専門職連携の実践者としてのアイデンティティー」の形成過程を明らかにすることを目的としている。専門職連携教育(IPE)に参加する医療系学生【研究項目A】と卒後に専門職連携を実践(IPW)した経験を持つ医療従事者【研究項目B】の2つの視点から研究課題に取組んでいる。文献調査より、専門職連携協働を「包括的患者ケアの目的を共有し、各専門分野の知識や技能を持続的な相互行為を通じて深めていく人々の集団(実践共同体)」として理論的に位置づけることとした。2014年度は、医療系学生の学習への参加状況のビデオ撮影やポートフォリオ解析、また、医療従事者へのインタビューを実施することができた。
【研究項目A】医療系学生の専門職アイデンティティー形成過程:1)IPEの参加状況をビデオ撮影し、談話分析により多職種学生による協働や合意形成過程を明らかにした。多職種による協働を通じて、学生の専門職意識が強化されることが確認できた。2)IPEに参加する医療系学生の経年的な専門職意識の変化についてポートフォリオの質的解析を通して評価することができた。IPEでの学びについて、チームとチームワーク、コミュニケーション、役割と責任といった共通カテゴリーが抽出され、IPEを通して医療系学生は各々のカテゴリーに対する意識が徐々に強くなっていく傾向にある。 【研究項目B】研修医・医療従事者の経験:1)予備的調査としてIPWに従事した経験を持つ医療従事者(歯科衛生士)にナラティブインタビューを実施した。彼らの経験から専門職連携に必要なコンピテンシーの要素の抽出を行なった。「自分自身の特性」「患者との関係から見た自分」「医療チームの中の自分」といった視点から専門職意識が形成されていったことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度は、1)先行研究・文献調査を実施し、Social learning theoryの一つであるCommunities of Practice(Wenger, 1998)を理論的枠組みとした。実践共同体のメンバーとしてのアイデンティティーは、メンバーとの相互行為や自分自身の参加・経験を通して形成、強化されることが記述されており、本研究の研究課題に有用であると考える。2)多施設でデータ収集を実施するため、研究協力体制を整えることが必要であった。3施設からの協力体制を構築することができた。3)データ収集は、IPEセミナーのビデオ撮影や学部連携教育でのポートフォリオ解析を進め、卒前IPEを通した医療系学生の専門職意識の変化を予備的に調査することができた。2014年度は研究成果の一部を欧州医学教育学会(AMEE)、日本医学教育学会、日本保健医療福祉連携教育学会で発表した。4)医療従事者の専門職としての経験やIPWに対する価値観についてインタビュー調査を歯科衛生士に対して実施し、IPWを通して強化された専門職意識について抽出することができた。その結果は、2015年7月に開催される日本歯科医学教育学会で発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)より幅広い医療従事者からのデータ収集を実施するためには、今後も多施設の研究協力体制をさらに充実させる必要がある。2)2014年度は、臨床実習中または終了した高学年の医療系学生に対して専門職意識やIPWに対する価値観を聞くことができなかったため、卒前教育においてもインタビュー調査を行なう必要性がある。3)2014年度は、卒後の医療従事者に対するナラティブインタビューは歯科衛生士のみの実施になってしまった。より多くの医療専門職に対するインタビュー調査の実施が必要となる。4)専門職アイデンティティー形成過程について、随時質的解析を行ない、研究成果を発表していく。
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Causes of Carryover |
2014年度は、研究協力体制の構築に時間を要したため、データ収集の開始が若干遅れた。そのため、データ収集に伴う旅費や音声データの文字起こし費用の使用が、予算額より少なくなってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度に引き続き、研究協力施設でのインタビュー調査(医療系学生・医療従事者)、ポートフォリオ解析(医療系学生)、IPEのビデオ撮影(医療系学生)を実施する。主に下記の3点に使用する。1)データ収集・フィールドワークのための旅費、2)インタビューデータの文字おこしやデータ入力のための費用、3)研究成果発表のための国内・国際学会の参加費及び論文出版に係わる費用。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 初年次学部連携教育における学習過程の縦断的調査:ポートフォリオの質的分析から2014
Author(s)
今福輪太郎, 片岡竜太, 小倉浩, 刑部慶太郎, 鈴木久義, 榎田めぐみ, 馬谷原光織, 松木恵里, 高木康, 木内祐二, 下司映一, 倉田知光
Organizer
第7回 日本保健医療福祉連携教育学会学術大会
Place of Presentation
新潟
Year and Date
2014-09-20 – 2014-09-21
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[Presentation] 初年次学部連携教育を通して学生は何を学んだのか:ポートフォリオの質的分析から2014
Author(s)
今福輪太郎, 片岡竜太, , 馬谷原光織, 小倉浩, 刑部慶太郎, 鈴木久義, 榎田めぐみ, 松木恵里, 高木康, 木内祐二, 下司映一, 倉田知光
Organizer
第46回日本医学教育学会大会
Place of Presentation
和歌山
Year and Date
2014-07-18 – 2014-07-19
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