2014 Fiscal Year Research-status Report
新規ハイドロダイナミック遺伝子導入システムによる遺伝子治療の前臨床研究
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26860354
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上村 顕也 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (00579146)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 / ハイドロダイナミック遺伝子導入法 / 肝臓 / 大動物 / 血管造影手技 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ハイドロダイナミック法(HGD)を用いた遺伝子治療法を構築するため、申請者らが開発した、新規HGDシステムの安全性、有用性、再現性をイヌを対象として検証することを目的としている。平成26年度の本研究助成基金助成金によって、以下の研究成果が得られた。 1.本システムと申請者らが開発してきたバルーンカテーテル挿入による肝臓区域特異的なHGD法を組み合わせ、体重20 kg前後のイヌに対して新規HGDシステムにより、複数の時間―内圧曲線のもとに、HGDを行った。 臨床応用を念頭におき、生理学的、血液生化学的、組織学的な安全性の評価を行った。各肝区域特異的に遺伝子を導入することが可能で、心臓を含む他臓器への生理学的な影響を認めず、血液生化学的な検討でも一時的な肝酵素の上昇を認めるのみで、長期的な対象動物の健康状態にも異常所見を認めなかった。組織学的には注入直後の肝類洞構造の拡張を認め、ラットを用いた血流測定でも、同様の所見が得られた。さらに血漿サイトカインの検討においても、炎症性サイトカインの上昇を認めず、血管壁の伸張時に上昇するとされるミオカインの上昇を認めたことから、本遺伝子導入システムとカテーテルを用いた、肝区域特異的な遺伝子導入法の影響は注入部位特異的、一過性、可逆的であり、方法論の安全性が示唆された。 遺伝子発現効率の検証では、pCMV-Lucなどのマーカー遺伝子発現プラスミド導入後に、区域特異的で効率的な遺伝子発現を、活性の測定、免疫染色などにより実証し、論文発表した。 2.以上の結果に基づき、新規遺伝子導入システム、モーター制御を行うためのアルゴリズムの改良を重ねており、以上の成果は安全で再現性のある遺伝子治療法を構築するための基盤となる、と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 新規HGDシステムと申請者らが開発したバルーンカテーテル挿入による肝臓区域特異的なHGDを組み合わせ、安全で効率的な遺伝子導入が可能であった。 2. 遺伝子治療の再現性を担保するMade in Japanの遺伝子導入システムの有用性が示され、来年度の研究に向けた基盤が確立された。 3. 臨床応用に向けた観点から生理学的、血液生化学的、組織学的な安全性の評価が可能であった。 4. 研究協力者である、Liu教授より、研究の方向性について、適切なアドバイスを得ることが可能であった。 以上の点から、現時点で本研究が順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては平成26年度の結果に基づき、イヌに対してhAATなどの長期遺伝子発現を検証可能なマーカー遺伝子をHGDにより導入し、新規HGDシステムを用いた遺伝子治療効果を検証する。 具体的には、実験用雑種イヌに対して、最適な時間―内圧曲線で、新規システムを用いてhAAT(alpha-1 antitrypsin)発現プラスミド(pCAG-hAAT、chicken beta actin promoterによりhuman alpha-1 antitrypsinが発現)を、肝臓を対象臓器として導入し、長期遺伝子発現効果、再現性、及び安全性を1年間評価する。導入効率、再現性はイヌ血中hAAT濃度を経時的にELISA法により評価し検証する。また観察期間を通し(A)と同様に安全性の評価を行い、さらにはイヌの成長と発達から長期的な身体への影響(食欲、体重変化などを含む理学的所見、採血などによる晩発性臓器障害の評価等)も厳重に解析する。経過観察中に必要が生じた場合は肝生検を施行し、臓器障害を検証する。なお、プラスミドは研究協力者であるLiu教授より供与される。 これらの結果から新規HGDシステムの臨床応用に向けた、長期遺伝子発現効果、安全性が確認され、またalpha-1 antitrypsin欠損症に対する遺伝子治療効果が示される。 本研究の成果により、個体や対象臓器による遺伝子導入効率の差異を減じ、「誰もが、どのような患者さんにも」再現できる安全な遺伝子治療システムの確立が可能となる。
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Research Products
(7 results)