2014 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞樹立過程には組織ごとの特異的ルートがあるのか
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26860365
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
有岡 祐子 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任助教 (10709497)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 体細胞初期化 / 組織特異性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初期化4因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)を遺伝子導入することで、分化した体細胞から人工多能性幹細胞(iPS細胞)の樹立が可能となった。しかし、初期化経路については未だ不明な点が多く、特に組織特異性については検討がなされていない。本課題では、組織体性幹細胞ステージに焦点をおくことで、iPS細胞の樹立過程に組織ごとの特異性や指向性があるかを明らかにし、iPS細胞樹立メカニズムを解明することを目的としている。対象組織は扱いやすさの点から毛包細胞とし、組織幹細胞のマーカーとしてLgr5を用いた。Lgr5の発現をLacZ発現によってlineage tracingできるマウスから毛包細胞を分離し、Lgr5陽性ステージを通過する細胞の割合を確認したところ、Lgr5陽性ステージを通過する細胞が存在した。体細胞初期化に組織特異性があることが示唆される。しかし、大半は非特異的な経路を辿っており、特異性を有した細胞の割合は非常に低く、対処法を現在検討中である。また、毛包細胞のうち、Lgr5陽性、Lgr5陰性、毛包細胞全体、の3群をフローサイトメーターによって分離し、Lgr5の発現の有無によるiPS細胞の樹立効率を比較したところ、初期化のマーカーのひとつであるアルカリフォスファターゼ染色陽性の割合がLgr5陰性細胞において有意に高かった。Lgr5の発現の有無が初期化効率に関連している可能性が示唆され、さらに検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Lgr5を毛包細胞の組織幹細胞のマーカーとして初期化経路の組織特異性を検討しており、一部特異性を見出せた。しかし、その割合は非常に少なく、大半が非特異的なルートであることが判明した。そのため、特異性についてのさらなる検討が困難をきわめており、本来の達成度には到達できていない。しかし、本課題を遂行していく中で、Lgr5発現と初期化経路について新たな知見が得られてきている。以上を踏まえ、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに新生児毛包細胞を用いて、体細胞初期化経路に組織特異的なルートの存在があることが認められた。しかし、その割合は非常に少なく、その後の詳細な検討が困難な状況になっている。これを打破するため、生後の毛包細胞ではなく、より未分化な細胞、胎児由来細胞を用いることを検討している。
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Causes of Carryover |
年度途中で岐阜大学から名古屋大学への異動があり研究が中断した事と、体細胞初期化経路に組織特異的なルートの存在を見出したものの、その割合が非常に少なく、その後の検討が困難で対処法に時間を要しているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
達成度がやや遅れている分、研究費使用計画もやや遅れているが、平成26年度の購入予定であった抗体等を平成27年度に購入する予定である。
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