2014 Fiscal Year Research-status Report
Invivo及びInvitro記録法を用いたボツリヌス毒素の鎮痛作用機序の解明
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26860390
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
申 敏哲 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (70596452)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ボツリヌス毒素 / 急性疼痛 / 慢性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
ボツリヌス毒素は極微量では筋収縮異常による種々疾患およびリハビリに広く用いられている。しかし、最近多くの臨床報告によると、運動神経系に対する作用のみでなく感覚神経系に対する作用、特に慢性疼痛の鎮痛作用を有することが示唆され、慢性疼痛の鎮痛薬としての役割が注目を集めている。しかしながら、その鎮痛作用が末梢神経系に対するものか、また、中枢神経系である脊髄レベルにおいての作用であるかは未だ明らかではない。作用機序を明らかにするために、雄性Wistarラットを用いて右後肢足底に A1型毒素のBOTOX又はA2型毒素のA2NTXを1〜10 unit/site を注入後, 運動神経系に対する作用を判断するために注射後7日目までの時間経過によるトレッドミルランニングテストを行った。筋注したBOTOX又はA2NTXの濃度依存的にトレッドミル走行時間を減少させた。運動神経系に対する作用は3unit/siteから見られ、BOTOX筋注群よりもA2NTX筋注群が、トレッドミル走行時間の速やかな減少が認められた。さらに感覚神経系への作用を測定するために、von Frey テストを行った。急性炎症モデルラット(1%carrageenan) 又は慢性炎症モデルラット(5 mg/ml CFA)を用いて、痛み刺激に対する痛覚測定と熱刺激閾値測定を行った。その結果、急性炎症モデルラットとともに慢性炎症モデルラットで、BOTOX又はA2NTXの投与は濃度依存的に閾値の低下を示した。特にA2NTX群では臨床濃度に近い1 unit/siteで閾値の有意な低下が認められた。以上のことから末梢に投与したA2NTXはBOTOXに比べ作用発現時間が速く,また効力が強い可能性が示唆された。また、その作用は1unit/ site以下では、運動神経に対する作用は見られなかったが、感覚神経には有意に作用することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ボツリヌス毒素の使用および動物使用に関する大学の各種委員会への提出書類の準備と審査手続きの煩雑さによって実験開始が遅くなった。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は脊髄スライスに後根を付した標本を用いて末梢から痛覚情報が入力する脊髄後角膠様質細胞からパッチクランプ記録を行い、自発性のEPSCの頻度および振幅を記録し、毒素によって興奮性が低下しているか調べる。また、ラットin vivo標本を用いたBOTOXおよびA2NTXの作用機序の解明行う。2種類のボツリヌス毒素(BOTOXとA2NTX)が如何なる感覚に対して抑制作用を有するか、また、痛みに対してspecific であるかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
人件費と旅費の予算に多くの金額の差が生じた。国内外の学会に参加する予定だったが、学校の行事のために参加できなかった。また、人件費と謝金では研究者の募集を行ったが、実験技術の問題で募集できなかったので、人件費の使用が不可能であった。また、BOTOXの購入問題が発生し、購入金額に差が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動物、試薬などの実験消耗品の購入と機器の修理、実験装置の購入に使用する予定である。また、学会発表のための旅費と人件費として使用する予定である。
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