2014 Fiscal Year Research-status Report
放射線治療における臓器位置不確定性を考慮した新規有害事象予測モデルの包括研究
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26860402
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
秋野 祐一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00722323)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放射線治療 / 臓器位置解析 / 呼吸性移動 / 線量分布解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、体内臓器の日々の変形、治療中の生理的運動を包括的に解析する方法を開発することを目標としている。初年度はシネMRIを用いて臓器の存在位置の確率分布を評価するアルゴリズムを開発し、その精度検証を行うこと、さらにその技術を応用して、腫瘍や正常組織に投与される線量分布に臓器の生理的運動が及ぼす影響を評価することを目標とした。 我々は放射線治療を受ける患者に対し、治療時と同じ体位で矢状断、冠状断のシネMRI画像を30秒間撮影し、連続する各画像フレーム間の運動ベクトルをPyramidal Lucas-Kanade法を用いて解析した。この方法は2次元的に変化の大きい特徴点を求め、次の画像フレームで対応する特徴点を探索する方法である。次に解析対象とする臓器の輪郭をMRI画像の1フレーム上で描画し、その輪郭の各頂点に対し近傍の運動ベクトルを適用し、次のフレーム上の移動後の座標に複製することにより、全ての画像フレーム上に輪郭を作成した。各輪郭の重心座標を対象臓器の生理的運動として解析した。本解析手法の精度を検証するため、明瞭に描出されている血管の運動を本手法で解析し、また血管の輪郭重心の軌跡と比較した。両手法で解析した血管の運動データはほぼ一致しており、正確に対象臓器の運動を解析できていることが証明された。上記の内容を、学会発表(第109回日本医学物理学会学術大会)、学術論文(Medical Physics)を通して発表した。 さらに定位放射線治療で治療された患者の線量分布データを用いて、臓器の各ボクセルに投与される線量を臓器の生理的運動を加味して解析を行い、生理的運動が線量分布に与える影響を解析した。本内容は次年度に学会発表(International Congress of Radiation Research)を通して公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題研究における初年度の実施計画では、臓器の生理的運動による移動・回転に対応した線量評価技術の開発である。本内容は、(i) 生理的運動により位置が変化する臓器を追跡するアルゴリズムの開発、そして(ii) 臓器の運動を加味した線量分布の解析方法の開発、という2つの過程より構成される。 私は臓器の運動・回転についてシネMRIを用いて解析する方法を確立し、またその精度が十分であることを確認した。解析アルゴリズムは完成し、学会、英語論文を通して発表を行った。 次に線量分布の評価法について、我々はSBRTにおける線量分布変動を解析する技術を開発した。またその成果も次年度の学会で発表予定である。 以上より、初年度について本課題研究は当初の予定通りに進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度では生理的運動を考慮した線量分布の変動について解析した。ここでは臓器位置の時間変化を考慮し、線量分布は変化しないものという条件下で解析を行っている。しかし実際には臓器位置だけではなく、ビームデリバリーにも時間変化が伴う場合がある。例えばサイバーナイフを用いた強度変調放射線治療 (Intensity-modulated Radiation Therapy, IMRT)や、スキャニング法を用いた粒子線治療などである。これらの治療では、臓器位置・照射ビームともに時間変化があるため、それらが相互に影響して線量分布が大きく乱れるInterplay effectsと呼ばれる問題がある。次年度では解析対象をこの相互作用に拡張し、生理的運動が及ぼす線量分布への影響を更に深く解析する技術を開発する。 また臓器は生理的運動により変形を伴う場合がある。初年度に開発した技術は臓器が生理的運動のより移動した後に投与される線量を積算・平均化することにより実際に投与される線量を推測するものである。本手法は臓器が変形しないことを前提として投与線量を解析しており、臓器の変形を考慮する場合にはボクセルサイズの変化を考慮に入れて解析する必要がある。次年度では臓器の変形ベクトルを解析する方法を開発し、変形前後での適切な線量の比較・加算を可能にすることを目標とする。
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Causes of Carryover |
初年度の研究成果のうち、生理的運動が線量分布に与える影響について、2015年5月に開催される予定のInternational Congress of Radiation Researchで発表予定である。本学会は演題申請の締めきりである2014年12月の時点で学会参加費を支払う必要があった。学会の参加は次年度になるため、発表後に繰り越した金額と次年度の予算より参加費を請求する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(37,207円)と次年度予算より、5月に成果発表のため参加予定の学会の参加費(50,000円)を支払う予定である。
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