2014 Fiscal Year Research-status Report
パルス内エネルギー可変型シンクロトロン運転方式実用化に向けた研究
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26860409
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
水島 康太 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 研究員 (90637092)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 粒子線治療 / 粒子加速器 / シンクロトロン |
Outline of Annual Research Achievements |
粒子線治療に用いられるシンクロトロンに対してパルス内エネルギー可変型運転方式を適用すれば、治療装置としての性能を画期的に向上させることが可能となる。しかし、その運転方式を実用化するためには、ビームエネルギー変更に伴い原理的に生じてしまう「ビーム漏れ」を低減することが課題となる。 本年度の研究では、シンクロトロンを周回するビームのエネルギー変更から「ビーム漏れ」が発生するまでの過程を多粒子トラッキングシミュレーションにより検証し、その原因となる粒子について解析を行った。その結果、エネルギーの変更直前にビーム取り出しのために生成される不安定領域近傍に滞在していた粒子が、エネルギー変更のためのビーム減速によるエミッタンス増加によって不安定領域に移ることが原因と確認できた。また同時に、この「ビーム漏れ」粒子群は、ベータトロン振動数の振幅依存性によって、周回ビーム全体で観測したときの横方向振動スペクトルからわずかにずれて幅の狭いピークを持つことがわかった。この特徴を利用し、ビーム取り出し時に印加する高周波電場の周波数帯域に前述のピークに相当する周波数成分を重畳することで、選択的に原因粒子を取り出すことが可能となり、エネルギー変更後の「ビーム漏れ」粒子数は10%以下に低減した。 上記結果が得られたことから、さらにシミュレーションによって「ビーム漏れ」量の低減率と高周波電場の元の成分と新たに加えた周波数成分の振幅比との関係性について検証した。簡易モデルから、追加する周波数成分の振幅を増やし、振幅比を大きくすることで「ビーム漏れ」量は単調に減少すると予測していたが、シミュレーションからもモデル計算と非常によく似た結果を得ることができ、簡易モデルの正当性を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は多粒子トラッキングによる現象解析がメインであったが、それに用いるシミュレーションプログラムは申請者が過去の研究で開発、使用したものであったため、プログラムのデバッグや検証に大きく時間を割かれなかったことが計画内容を順調に進められた理由として大きい。また、課題の原因と解決手法についても、当初予想していたことと相違なかったことも大きな要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
エネルギーなどのいろいろなビーム条件でさらにシミュレーションによる解析を進めるとともに、様々なパラメータと「ビーム漏れ」量低減率の関係性をより明らかにしていくことを目指す。また、電源リップルによる磁場変動など、より現実的な条件をシミュレーションに加えていくことで、実際の加速器を用いたビーム試験で得られる結果との再現性を高める。最終的には、本研究で提案した「ビーム漏れ」低減法の有効性をビーム試験により実証し、シンクロトロンのパルス内エネルギー可変型運転方式実用化に求められる値まで低減可能か検証する。
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Causes of Carryover |
予定していた購入金額より少し低い金額で購入できたため、また、当初参加予定だった学会での発表を一つ次年度に変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に参加する予定の学会が増えたため、そのための旅費として使用する。
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