2014 Fiscal Year Research-status Report
小児期の健康状態が成人期の健康に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
26860422
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
桑原 絵里加 東邦大学, 医学部, 有期助教 (80713164)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 疫学 / 小児 / リンケージ / 健康状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、小児期の発育や健康状態が、成人後の健康を規定するとの仮説を発端としている。すなわち、小中学生の学校健診と成人後の住民健診の結果を連結し、疫学的手法を用いた解析により学校健診データの臨床及び予防医学的意義を明らかにするものである。使用するデータは、小児期の健診結果及びその受診者が成人した後の健診結果である。目的として、以下の三点を検討することが挙げられる。 「1.小児期の健康指標の特性についての検討」、「2.学校健診と成人健診結果の連結により、小児期の状態と成人後の健康アウトカムにおける関連の検討」、「3.小児期の生活習慣に対する効果的な介入方法の検討」である。 このうち、1に該当する研究として、対象地域A町の小中学校各1校で1981年から2013年までに学校健診を受診した2518人の健診結果を用い、小児期の睡眠時間とBMI、ストレスとBMIの関係をそれぞれ解析した。更に、2に該当するものとして、同対象地域の学校健診受診者のうち、371名分が成人後の健診結果と連結し得たため、小児期のBMIの変化と成人後の尿酸値の関係を解析した。これら3件の研究結果を、A町の学校保健関係者に報告の上、第73回日本公衆衛生学会(2014年11月、宇都宮)で発表した。 2014年度末には、A町の2014年度の学校健診・成人健診結果と、新たに対象地域として加わったB町の1996年度から2014年度までの学校健診・成人健診結果が追加入手された。A,B両町をあわせ4,495人の学校健診結果と、その受診者中633人の成人健診結果が連結し得た。現在その結果を元に解析を進めている最中である。 上記の結果より、目的の3、小児期の生活習慣に対する介入方法の検討を行いたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の3つの目的は、学校健診受診者の結果とその成長後の成人健診結果より、「1.小児期の健康指標の特性について検討すること」、「2.学校健診と成人健診結果の連結により、小児期の状態と成人後の健康アウトカムにおける関連の検討」、「3.小児期の生活習慣に対する効果的な介入方法の検討」である。 このうち、前者の2つは進行中である。本邦の一地域での縦断データを使用し、小児期のBMIが精神的なストレスに関連していることや、睡眠とBMIに関連があることを示せた意義は大きいと考える。更に、尿酸値については、成人の心疾患に関して単独で影響すると言う説もあり、小児期のBMI変化と成人期の尿酸値に関連があることが明らかになった。この検討では、小児期の尿酸値の推移も解析している。小児の尿酸値に関する縦断データは世界でもほとんど存在しない、稀な結果である。現在、小児期BMIと成人期の尿酸値の関連は、海外発信するべく、論文化を進めている最中である。 以上より、目的の2つは既に着手し、一定の結果が得られていること、これらの結果については今後、海外発信を行う予定であること、目的の最後の介入方法の検討については今後着手する方針であることから、おおむね順調な進展と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、目的に沿って解析を行う。すなわち、 1. 小児期の健康指標の特性については、脂質代謝、糖代謝、血圧、尿酸代謝項目及び問診項目を中心に学校健診結果の解析を継続する。 2. 小児―成人連結データの解析については、成人期の体格、脂質代謝、糖代謝、血圧、尿酸代謝など、動脈硬化性疾患に関わる項目をアウトカムとして小児期の生活習慣との関連を検討する。学校健診受診者のうち、成人期の結果が入手されて連結し得たものは2つの地域を合わせて30%程度と低いため、これらの結果にはバイアスが存在する可能性がある。よって、解析ではアウトカムを成人期とするのみでなく、9割以上が連結されていると思われる中学3年時の項目もサブ解析として検討する。 3. 小児期の生活習慣に対する効果的な介入方法の検討を行っていきたい。バイアスが懸念されるとは言え、既に小児期と成人期の健康状態に関連が見られた尿酸値については、連結データのうち、小児期のBMIや尿酸値の状態より成人期で尿酸値の改善が見られた例或いは悪化した例などを抽出し、体格や問診項目など生活習慣の特徴を分析する。更に、目的2で小児期と成人期に関連が見られた他の項目をアウトカムとして、同様の検討を行いたい。
|
Causes of Carryover |
本研究は、自治体や病院健診機関の協力の下に、健診データを基盤として実施されるリンケージ研究である。研究の開始された2014年度当初には1地域のみが対象であったが、同年度末に2つ目の地域の健診データを入手する目途が立った。研究を遂行するためには、データの整理・統合、解析、報告、自治体・協力病院への結果の還元など、検討事項や多岐に渡る手続きなどが存在する。それらを迅速に行うために必要な人員の補助として、来年度研究補助員を雇用することとした。そのための費用を来年度に残した。 また、研究成果をまとめ、海外発信するための費用も来年度に残した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由につき、2015年度は研究補助員への給与を支払う予定である。更に、データ解析に伴う費用や、自治体や協力病院への中間報告、最終報告のための旅費、通信費も発生する。解析結果の論文化や学会発表においては、旅費や校正費用などに充てる予定である。
|
Research Products
(3 results)