2015 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス直接検出法を応用した環境中ポリオウイルスのサーベイランス
Project/Area Number |
26860450
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
中村 朋史 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (90446881)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ポリオウイルス / 環境サーベイランス / レセプター結合型ビーズ / 次世代シークエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリオウイルス特異的レセプター結合型ビーズ(PVR-MB)を用い、環境中のポリオウイルス(PV)を直接検出する手法の開発を行った。環境水を模したバッファーにPVを外部添加した系においては、陰電化膜およびPVR-MBを併用することにより、PVを約5000倍に濃縮することが可能であった。しかしながら、CDC開発のPV血清型判定が可能なリアルタイムPCR(rRT-PCR ITD)では抽出RNAからの詳細な解析は困難であった。一方、Aritaによって報告されたPVカプシド全領域増幅法(ECRA法)では濃縮後のPVから得たRNAから目的領域DNAを増幅可能であった。さらに、増幅断片を次世代シークエンス(NGS)に供したところ、カプシド領域の塩基配列の解析に成功した。この系が実際の環境水に適用可能か、パキスタンの河川水を用いた検討を行った。陰電化膜およびPVR-MBによる濃縮後のRNAからrRT-PCR ITD法にてPV検出を試みたが、サンプルによっては全く検出不可であった。一方、ECRA法では全てのサンプルにおいて増幅断片が確認された。増幅断片をNGSで解析した結果、野生型PV、PVワクチン株、コクサッキーウイルス、エンテロウイルス等、多様なウイルスが確認された。ECRA法ではPV以外のエンテロウイルスも増幅可能なため、検出ウイルス数が増えたと考えられる。また、NGSではカプシド全領域の塩基配列情報が取得できるため、遺伝子変異やリコンビネーションの有無等の有用な情報も同時に解析することが可能であった。 本研究で開発した「陰電化膜+PVR-MB+RNA抽出+ECRA法+NGS」という手法は、培養細胞によるウイルス分離にかかる日数を短縮できることに加え、その分離バイアスを排除し、高感度に環境中のPVおよび非PVエンテロウイルスを検出および遺伝子解析することが可能であることが示された。
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