2014 Fiscal Year Research-status Report
看護助手を活用した人事労務管理に関する研究-看護師不足の解消に向けて
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26860460
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
早川 佐知子 広島国際大学, 医療経営学部, 講師 (90530072)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 看護補助者 / CNA / Registered Nurse |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多様な看護職種、とりわけ看護助手を用いた人事労務管理制度を構築することにより、看護師不足を解消する可能性を検討することである。日本の病院において従来行われてきた、「正看護師のみを重点的に用い、ゼネラリスト的に幅広い診療科、幅広い職務を担わせる日本の病院の人事労務管理」が、看護職という職種全体のもつ可能性を狭めているという仮説のもと、上級看護師から正看護師、准看護師、そして看護助手や病棟事務職等の多様な看護職に適切な役割分担を設定し、それぞれの職種の特性を活かすことのできる、新しい分業・協業体制を用いた人事労務管理システムの構築を検討してゆく。 初年度にあたる2014年度は、第一段階として、州法を中心とした文献資料をもとに、アメリカの認定看護補助者の現状と歴史について把握し、アメリカの医療システム全体の中でそれがいかに位置付けられてきたのかを分析した。成果としてまとめたものが、早川佐知子(2014)「看護補助者活用の現状と課題-アメリカCertified Nursing Assistantとの比較から」『日本医療経済学会会報』第78号、pp.79-115、である。この論文においては、①看護補助者と言えども、SEIUが組織化している医療機関があり、その場合には確かな付加給付や昇給システムが保障されるという点、および、②州法において看護補助者が携わることのできる職務が明文化されており他の看護職種との線引きがきちんとできているということ、以上2点をポイントにした。 また、その前提として、Registered Nurseがなぜ現在のような高い地位を獲得したのかということについて分析した成果が、早川佐知子(2015)「アメリカの看護師と専門職化」『広島国際大学医療経営学部論叢』第8号、pp.53-91、である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アメリカの事例と国内の事例を比較しながら、おおよその現状と歴史を把握することができ、また、それを研究成果として提示できたことから、おおむね順調であると判断している。そして、双方の看護補助者の処遇を比較した場合に指摘できることとして、労働組合の存在に着目したことは、これまでアメリカの看護職に関する先行研究でほとんど労使関係が取り上げられてこなかったことから、大きな前進であったと考える。 ただし、アメリカの場合は州ごとに看護法が設けられており、看護補助者に関しても、州による違いが出てくるはずである。2014年度はオレゴン州の事例に特化して分析を行ったが、それを全体として相対化するには至ることができなかった。次年度以降、他州にもフィールドを広げ、それぞれがどのような意味を持つのかという点にも言及できればと構想している。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目にあたる2015年度は、当初の計画通り、第二段階として、これまでの文献研究から明らかになったことを実 証するために、現地にてインタビュー調査と参与観察を行うことが主な内容となる。 (1)2008年調査、2012年調査に協力を得たオレゴン州、およびネブラスカ州の関係者に再調査を依頼済みである。具体的には、①それぞれの看護職がどのような養成制度を持っているのか。コミュニティカレッジであれば、カリキュラムの入手なども可能であるためわかりやすいが、そのほかの施設では、現実としてどのようなことが行われているのか。②どのような層がアプライしているのか。看護補助者の平均年齢を見る限り、新規学卒者は多くないと考えられる。どのような職歴のある層が志望するのか。③資格制度がどの程度汎用的な効果を持ち、病院で評価されるのか。ほぼすべての州で、看護補助者の認定制度があるが、この資格の有無が実際の就職の際にどれほど有効なのか。処遇にはどの程度反映されるのか。そして、他の州に移った場合には考慮されるのか。④日本で言うところの介護と看護の棲み分けについて。看護補助者の就業場所、そして職務の内容について。アメリカの場合、日本のように介護と看護は必ずしも明確になっているわけではないが、検討する価値は大きい。 以上の点を中心に、インタビューを実施したい。これらは、今後の日本の看護補助者の動向を占ううえでも、また、未整備である制度面を構築する上でも、非常に重要な論点となるであろう。 (2)前述のように、50州全体の看護補助者制度について俯瞰し、各州を相対視することが必要であるため、ひき続き各州法の看護補助者に関する規定の分析も同時進行で行いたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、下記の通りである。 第一に、予定していた書籍および電子ジャーナルを購入しなかったことである。これは、2014年度は研究資料として主に州法と労働協約を用いたためである。 第二に、インタビュー調査を実施した際に、予定していた謝金を支払うことがなかったためである。これは、ほぼすべての対象者が勤務時間中にインタビューを受けたことを理由に、謝金の受け取りを拒んだためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度は、予算に人件費の項目を計上していなかった。そのため、実際には研究補助者を用いたにも関わらず、謝金をここから支払うことができずにいた。2015年度もひき続き、州法の分析を残りの49州について行ったり、オレゴン州以外の病院が締結している労働協約の分析を行ったりする予定であるため、地道な作業が非常に多い。ゆえに、人件費の額を増やして研究補助者によるバックアップ体制を確かにして臨みたいと考えている。
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Research Products
(2 results)