2016 Fiscal Year Research-status Report
羊水塞栓症におけるアナフィラクトイド反応の関与に関する検討
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26860470
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
竹下 裕史 金沢医科大学, 医学部, 助教 (70387075)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 羊水塞栓症 / アナフィラクトイド反応 / C3a / C5a / 凝固障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
羊水塞栓症は分娩中あるいは分娩直後に急性呼吸困難、血圧低下、意識低下などの症状を呈する疾患で、発生頻度は低いが致死率は非常に高い。この疾患は母体血液中に羊水が流入することで発症すると考えられているが、未だ不明な点が多い。本研究課題では、羊水塞栓症におけるIgEを介さないアナフィラキシー反応(アナフィラクトイド反応)の関与について検討を重ねている。昨年度までに、ラット羊水暴露によるラット肥満細胞株(RBL-2H3)の反応性を検証した。その結果、羊水に含まれる成分が肥満細胞を直接刺激する可能性は低いことが示唆された。次いで、肥満細胞の脱顆粒反応は活性化した補体であるアナフィラトキシン(C3a、C5a)でも生じることから、ラットを用いた羊水の血管内投与による血液中補体の活性化と、ラット肥満細胞株(RBL-2H3)を用いたアナフィラトキシンによる脱顆粒反応について検証することとした。しかしながら関連文献によれば、本研究で使用しているラット肥満細胞株(RBL-2H3)はアナフィラトキシンによる脱顆粒反応を起こさない可能性があり、培養細胞を用いた実験計画を変更する必要が生じた。そこで、羊水塞栓症で多くみられる血液凝固障害にも着目し、ラット羊水の血管内投与が補体、凝固機能等に及ぼす影響について検証することとした。現時点では、各妊娠期のラットに羊水を投与し、一定時間後に血液を採取している段階である。症例報告では、分娩中あるいは分娩直後に致死的な変化を認めることが多いのに対し、本実験では少なくとも羊水投与から短時間のうちに致死的な変化は起きていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度の段階で、本研究で使用しているラット肥満細胞株(RBL-2H3)はアナフィラトキシンの結合では脱顆粒反応を起こさない可能性が関連文献により発覚した。そのため、培養細胞を用いた実験計画を変更する必要が生じ、実験動物を用いた新たな実験計画を立案した。本年度から新たな実験計画を遂行するために実験環境を整備したため、課題の遂行が遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、羊水塞栓症の確定診断は、羊水成分や胎便成分などを母体血管内から証明することとされている。しかしながら、血管内に流入した羊水が本疾患の様々な病態を生じさせるメカニズムについて、実験的に証明した報告は未だにない。従来から実験動物を用いた検討がなされているが、本研究課題と同様に、羊水を血管内に投与しても致死的な変化は認められていない。ただし、たとえ無症候性であっても、羊水が血管内に流入することで、血液成分に何らかの変化が生じている可能性は否定できない。したがって、本研究ではアナフィラトキシンや凝固関連物質を対象としているが、その他の血液成分に対しても検証し、本疾患の原因が羊水にあるとする確証を得たいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究計画の大幅な変更と所属機関変更に伴う研究環境の整備により、研究全体が遅延したため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験動物、試料の保存や測定に必要な消耗品の購入に使用する予定である。
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