2015 Fiscal Year Annual Research Report
消化器がんにおけるDNA脱メチル化酵素TET1の役割の検討~がんの発生と進展~
Project/Area Number |
26860494
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 洋太郎 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90608358)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | DNA脱メチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
TETファミリータンパクによるメチル化シトシン(mC)のヒドロキシメチル化シトシン(hmC)への変換からDNAの脱メチル化反応は始まる(Tahiliani M. Science 2009, Ito S. Nature 2010, Ito S. Science 2011, He YF. Science 2011)。我々は、正常組織細胞と比較してがん細胞ではhmCが著明に低下していることを示し(Kudo Y. Cancer Sci. 2012)、DNA脱メチル化反応の異常ががん細胞の生物学的特性に関与する可能性が示唆されていた。 次に我々はTET1に注目し、そのがん細胞における機能解析に着手した。大腸がん細胞株、肝がん細胞株、膵がん細胞株においてTET1遺伝子をノックダウン(KD)したところ、がん細胞の増殖速度が低下した。詳細な観察の結果、TET1遺伝子KDによりがん細胞では有糸分裂異常が有意に多く生じており、増殖抑制の一因と考えられた。遺伝子トランスクリプトーム解析により、細胞分裂、有糸分裂、細胞増殖に関わる遺伝子群の発現がノックダウン細胞で変化しており、その中でもセントロメアタンパク遺伝子群(CENP遺伝子)に着目した。CENP遺伝子群はTET1遺伝子KDで発現低下しており、その発現低下は有糸分裂異常を生じることが既に報告されていたからである(Foltz DR. Nat Cell Biol 2006)。ゲノムワイドにmCおよびhmCの分布を調べた結果、TET1遺伝子KDによりCENP遺伝子のCpG-shoreとされる領域のメチル化レベルが増加し、またクロマチン免疫沈降法によりTET1タンパクがCENP遺伝子に結合することが明らかとなった。以上の結果は、TET1の機能阻害がCEPN遺伝子の発現抑制を介した有糸分裂異常惹起によるがんの増殖抑制をもたらす可能性を示すものである。
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[Presentation] 消化器癌におけるDNA脱メチル化酵素TET1の役割の検討2015
Author(s)
工藤洋太郎,立石敬介,永江玄太,山本恵介,中塚拓馬,浅岡良成,田中康雄,池上恒雄,白井聖一,関元昭,米沢理人,油谷浩幸,小池和彦
Organizer
第101回日本消化器病学会総会
Place of Presentation
仙台国際センター
Year and Date
2015-04-23 – 2015-04-25