2014 Fiscal Year Research-status Report
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26860519
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
細野 邦広 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (50537339)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大腸癌 / TNF-α / TNF-R1 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor: TNF)は、種々のサイトカインの誘導や細胞増殖、分化、アポトーシスによる細胞死の誘導など多様な細胞現象に重要な役割を果たしている。 TNFの過剰な産生はさまざまな炎症性疾患や癌の発症に関与し、TNFはこれらの治療の標的となっているが、大腸癌においてはその臨床応用は未だ途上である。本研究では、大腸発癌過程におけるTNF-R1関連因子の分子機構を明らかにし、また大腸癌の早期発見におけるTNF-R1のバイオマーカーとしての臨床応用を目指すものである。 今回我々は、TNF-R1ノックアウトマウスやTNF-R2ノックアウトマウスを用いて大腸発癌実験を行い腫瘍形成への影響や、正常粘膜・腫瘍粘膜におけるTNF-αと受容体の発現などをPCR法や免疫染色法で検証し、その下流シグナルであるJNK、NF-κB、caspase3の発現をリン酸化ウエスタンや免疫染色法で検証した。さらには抗TNF-α抗体(MP6-TX22)を投与した大腸発癌モデルマウスを作成し、抗腫瘍効果を認めた。 またTNF-αレベルは病態の活動性を反映するマーカーとしても注目されるが、TNF-αの血中半減期は20分以下と短く、しかもpg/mLという非常に低濃度のレベルで存在するため、測定を困難なものとしている。一方、TNF受容体の濃度レベルはng/mLと約1000倍高く、そのため測定による誤差が少なく、しかも可溶性受容体の半減期はとても長く安定性が高いため、その測定は良い指標になりうると考えられる。本研究において大腸腺腫患者における血清TNF-R1値を世界に先駆けて測定し、有意に高いことを突き止めた。またROC曲線下面積も0.928と高くバイオマーカーとしての有用性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はすでに、高脂肪食下での大腸腫瘍増大のメカニズムとしてJNKが活性化されることで腫瘍増殖が起こることを報告している。JNKの上流にはTNF-R1とTNF-R2があり、それぞれTNF-αの刺激により作動するが、大腸発癌におけるTNF-R1、TNF-R2の役割は明らかでない。一方、我々はヒト大腸組織において、免疫蛍光染色による共焦点顕微鏡でTNF-R2ではなくTNF-R1がp-JNKと同じ発現を大腸腺腫上皮細胞で認めることを突き止めており、また腺腫上皮特異的TNF-R1の発現は、マイクロダイセクションによるRealTime-PCR法でも確認しており、TNF-R1/JNK経路が大腸発癌において重要な役割を果たしていると考えている。この仮説証明のためにTNF-R1ノックアウトマウスとTNF-R2ノックアウトマウスでの大腸発癌実験を行い腫瘍形成への影響を検証した。さらに細胞増殖やアポトーシス、正常部と腫瘍部のJNK活性や下流シグナルの発現をタンパク解析や免疫染色法で解析した。また一方で、抗TNF-α抗体(MP6-TX22)を投与した大腸発癌モデルマウスを作成し、抗腫瘍効果やTNF受容体発現状況、JNK活性などを解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸腺腫患者における血清TNF-α、TNF-R1、TNF-R2値の検討では、TNF-R1は対照群と比較して、大腸腺腫群で有意に高く、TNF-α、TNF-R2は両群間で有意差はなかった。また一人あたりの大腸腺腫の数別に血清TNF-R1値を比較すると、大腸腺腫数が3個以下の群のTNF-R1は337.4±93.5 ng/mL、4個以上有する群は405.9±55.4 ng/mLと高値であり有意差を認めた。これらの研究実績を基に、大腸癌患者における血清TNF-α、TNF-R1、TNF-R2値の解析を計画している。研究参加症例数は大腸癌患者100例、対象群50例を目標とする。なお、感染症、炎症性腸疾患、自己免疫性疾患、アレルギー性疾患、喘息など血清TNF-αレベルを上昇させる可能性が高い併存疾患をもつ者は除外する。また血清値の比較以外に、悪性度や治療効果との関係性を検証し大腸癌のバイオマーカーとして臨床的意義を明らかにしていく。
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Research Products
(2 results)