2014 Fiscal Year Research-status Report
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26860521
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
三井 烈 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90434092)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微小血管 / 平滑筋 / 血管平滑筋 / 自律神経 / 自動能 / 消化管 / 細静脈 / 細動脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
1970年代の小腸粘膜下血管の研究において細静脈には自動能も神経支配もないと報告されていることもあり、消化管細静脈の機能研究はほとんど行われてこなかった。しかし、最近の我々の研究では、膀胱および遠位結腸の細静脈に自発収縮や神経支配がみとめられた。さらに本研究により、胃細静脈でも自発収縮がみとめられ、胃の細静脈と細動脈には交感神経性制御機構にちがいがあることも判明した。研究結果の概要を以下に示す。 ラット胃粘膜下層標本を用い細静脈の直径を経時的に記録したところ、毎分数回の自発収縮がみとめられた。細胞内Ca2+イメージングでも、同様の頻度でおこる細静脈平滑筋の自発的細胞内Ca2+上昇(Ca2+ transients)が観察された。薬理学的な検討により、筋小胞体からの自発的Ca2+放出がCa2+活性化Cl-チャネルを開口させて脱分極(Cl-流出)をひきおこし、それに続くL型Ca2+チャネルを介したCa2+流入により細静脈が収縮すると考えられた。膀胱や遠位結腸や胃は、尿や糞塊や食物塊により持続的に伸展されるため、血管壁のうすい細静脈は圧迫され血液のうっ滞がおこりうる。したがって細静脈の自発収縮は、伸展性臓器においてうっ血を防ぐための普遍的なしくみであると推察された。 胃粘膜下細静脈では、交感神経による収縮と一次求心性神経による拡張がみられた。胃粘膜下細動脈はプリン(ATPやその関連物質)の受容体であるP2X1受容体を発現しており、交感神経から放出されるプリンとノルアドレナリンの両方が、収縮に寄与していた。一方、並走する細静脈にP2X1受容体は発現せず、ノルアドレナリンのみが作用して持続時間の長い収縮がおこった。スポーツをしている際や出血時など交感神経優位の状況では、消化管細静脈が持続的に収縮して消化管外への血液排出を促し、脳や心臓などへの血流配分を増やすものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前行っていたラット遠位結腸細静脈の研究では、粘膜下層標本が厚いため蛍光カルシウム指示薬Fluo-8 AMを細静脈平滑筋内にとりこませることができなかった。本課題で用いたラット胃粘膜下層標本は、比較的血管のまわりの結合組織も少なくFluo-8 AMが細静脈平滑筋へとりこまれ、消化管細静脈としては初めて自発的Ca2+ transientsを記録することができた。 また、胃細静脈に対する自律神経支配に関しては、交感神経から放出されるノルアドレナリンにより収縮がおこることと、一次求心性神経から放出されるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)により拡張がおこることを示した。また、交感神経性収縮について細静脈と細動脈でちがいがみられた。細動脈ではプリンおよびノルアドレナリンを介した一過性収縮であったのに対して、細静脈ではプリンの関与はなく、ノルアドレナリンのみによる持続的収縮がみられた。 胃細静脈で観察された自発収縮および自発的Ca2+ transientsの発生機構や、細静脈にたいする神経支配様式について論文にまとめ、発表した。このことから、おおむね研究は順調にすすんでいると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
細静脈のなかでも毛細血管直後の直径20 μm前後のものは、毛細血管後細静脈(postcapillary venule、以下PCVと略す)とよばれる。様々な臓器において炎症がおきた際に、血液成分がこの部位から漏出し炎症の治癒につながるとされている。PCVの収縮性細胞(mural cell)は複数の突起をもつ星形の細胞であるとの報告があるが、その収縮能については一般的に研究が進んでいない。 これまでの本申請課題では、直径30-130 μmの細静脈を中心として収縮機能の検討をおこなってきており、直径20 μm程のPCVの収縮機能についてはいまだ検討すべき点が多く残されている。これまでの結果から、ラット胃粘膜下層標本は、ビデオイメージングによる経時的血管径測定や細胞内Ca2+イメージング法によるmural cellsの細胞内Ca2+動態の記録に適していると考えられる。この標本を用いてPCVについても同様の検討をすすめることにより、いままでにどの臓器でも報告されていないPCVの自発収縮能や下流の細静脈で観察される自発収縮にたいするペースメーカー機能などが明らかになると期待される。
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Causes of Carryover |
Fluo-8 AMとは別の新しい蛍光カルシウム指示薬が発売されたため、ラット胃粘膜下層標本に適用可能か否かという点について予備検討している。この実験結果をみてから、次回購入するカルシウム指示薬の種類を決める必要があるため、次年度に予算を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の予備検討の結果にもとづいて蛍光カルシウム指示薬を購入する予定である。
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Research Products
(4 results)