2014 Fiscal Year Research-status Report
消化管の炎症性発癌におけるオートファジーの意義の解明と治療応用
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26860538
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Research Institution | The Institute for Adult Diseases Asahi Life Foundation |
Principal Investigator |
崎谷 康佑 公益財団法人朝日生命成人病研究所, その他部局等, 教授 (60631299)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オートファジー / 大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は消化管の感染、炎症、発癌におけるオートファジーの意義を解明することである。 オートファジーは細胞内のアミノ酸を再利用する機構で、酵母の飢餓の研究で必須遺伝子が同定された(Tsukuda and Ohsumi FEBS letters 1993)。オートファジーの機構は哺乳類でも保存され、飢餓のみならず発生や分化、各種疾患の感染、炎症、癌といった各過程で役割を持つことが明らかになりつつある。しかし、炎症性発癌の各過程においてオートファジーは促進的に働くのか、抑制的に働くのかは未だ不明である。これを明らかにすることで胃癌、大腸癌の原因の解明、治療法の確立に結びつけることを目標とする研究である。 全身オートファジー不能マウスは生後24時間で致死のため、消化管特異的オートファジー不能マウスを作成する。消化管特異的オートファジー不能マウス (CK19-CreERT; Atg5 flox/flox)に炎症性発癌のモデルである、AOM/DSS誘発大腸癌を作成する。このモデルでは、タモキシフェン(TAM)の投与によって遺伝子改変をコントロールできる。TAMの投与時期を変えることによって、オートファジー不能となる時期を調節できることを利用し、まずは完成した大腸癌に対するオートファジー阻害の効果を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AOM/DSSによる大腸癌は、免疫染色にてCK19, Atg5陽性であり、大腸癌の完成後にTAMを投与することによって、大腸癌でオートファジーを欠損させることができた。腫瘍のサイズはオートファジー欠損群でコントロール群より統計学的有意差を持って小さくなり、オートファジー阻害による腫瘍縮小を認めた。オートファジーを阻害すると、癌抑制遺伝子p53が活性化し、アポトーシスによる癌細胞死が増加することが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸癌でオートファジーを阻害すると、代償的に増加する生存シグナルがあることが予想される。そのシグナルをオートファジーと同時に阻害することによって、オートファジー阻害治療に抵抗性の癌に対する効果を期待できる可能性がある。大腸癌の分子標的治療においては、KRAS遺伝子の変異による治療抵抗性などが臨床的に問題になっている。これらの問題を解決する併用療法やシグナルの解析を継続する。
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