2014 Fiscal Year Research-status Report
虚血性心疾患に対する免疫炎症性マーカーの臨床的有用性の探索
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26860543
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂本 愛子 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (00721854)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 臨床心臓学 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの冠動脈造影施行症例を対象とした研究で、申請者は、冠動脈有意狭窄症例では、非有意狭窄症例と比較して、血清IgG4値が有意に高値をとることを報告した(Sakamoto A. Clin Chim Acta, 2012)。今回の検討では、冠動脈造影施行症例や、冠動脈CT施行症例を対象に、血清IgG4値が、冠動脈プラークや、心臓周囲脂肪および異所性脂肪浸潤、その後の主要心血管イベント発生と、どのような関連があるかについて、解析を行った。 はじめに、冠動脈CT施行症例において、血清IgG4値は、非石灰化プラーク、なかでも低輝度プラークと有意な関連を認めた。さらに多変量解析の結果、この関連は、高血圧や高脂血症、糖尿病、喫煙といった古典的冠危険因子や、別の炎症性マーカーとして知られる血清hsCRP値と、独立している可能性が示された。 また、冠動脈CT施行症例を対象に、心臓周囲脂肪量と血清IgG4値の関連を検討したところ、血清IgG4値は心臓周囲脂肪量との間に、統計学的に有意な相関を認めた。この一方で、右室や左室への異所性脂肪浸潤の有無と血清IgG4値の間には、明らかな関連が見られなかった。 さらに、冠動脈造影施行症例および冠動脈CT施行症例を対象に、それぞれの検査で明らかな冠動脈有意狭窄を認めなかった症例の、ベースラインでの血清IgG4値とその後の心血管イベントの関連を調査した。冠動脈造影施行症例を対象とした検討において、ベースラインの血清IgG4値が高値の症例では、心血管イベントの発生率が有意に高かった。冠動脈CT施行症例を対象とした検討でも、ベースラインでの血清IgG4値が高値の症例では、その後の心血管イベント発生率が高い傾向が見られたが、統計学的有意差は認めなかった。 以上の結果から、冠動脈硬化の生成・進展に、IgG4関連の免疫炎症学的機序が関与する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IgG4と心血管病変の関連について、当初の予定通り、IgG4と冠動脈プラーク、心臓周囲脂肪、異所性心筋内脂肪浸潤、さらに心血管イベント発生率について検討を行い、結果を国際学会および国内学会にて発表することができた。現在、論文発表をめざして、論文投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果をとおして、血清IgG4値は、冠動脈有意狭窄症例で高値をとるだけではなく、その後の心血管イベント発生に対しても独立した予測因子である可能性が示された。冠動脈CT施行症例では、ベースラインの血清IgG4値が高値の症例では、その後の心血管イベント発生率が高い傾向が見られたものの、統計学的有意差は認めなかった。しかしながら、この結果は、冠動脈造影施行症例を対象とした検討よりも、フォローアップ期間が短かったことも一因として考えられる。今後も引き続き、対象症例について心血管イベント発生の追跡調査を行うとともに、次年度は、冠動脈造影にて冠動脈に有意狭窄を認め、経皮的冠動脈形成術を施行して冠動脈にステントを留置した症例を対象に、血清IgG4値とステント内再狭窄との関連について検討を行いたいと考えている。
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Causes of Carryover |
発注していた物品が在庫の関係で当該年度の納品がかなわなかったことから、その支出を見込んでいた分を次年度使用額とさせていただきました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については当該年度に発注済みの物品に充当する予定でしたので、当初の計画どおり研究を推進していくことに支障はありません。
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