2014 Fiscal Year Research-status Report
心不全及び背景疾患が脂肪由来間葉系幹細胞の再生誘導効率に与える影響についての検討
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26860549
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高島 伸一郎 金沢大学, 大学病院, 特任助教 (60547165)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脂肪由来間葉系幹細胞 / 心臓再生治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
皮下脂肪組織由来間質細胞は、体性幹細胞(自己由来間葉系幹細胞)として、急性心筋梗塞患者の再灌流治療後に経冠動脈的に投与すると、主に血管新生の促進やアポトーシス/心筋線維化の抑制(すなわち梗塞範囲の縮小)という機序を介して残存心機能の改善をもたらすことが、基礎的および臨床試験のメタアナリシスでも示されているが、左室収縮能改善効果は2-3%とされており十分とは言えない。我々は治療に用いられる自己皮下脂肪由来幹細胞の再生誘導効果が個々に異なるという仮説のもと、それを決定づける要因について基礎的検討を始めている。 平成26年度は、マウス皮下脂肪組織からの効率的な間質細胞分画の単離法の最適化とフローサイトメトリー解析(細胞表面抗原解析)の条件設定をほぼ完了した。またマウス虚血再灌流モデル(急性炎症モデル)を作成し、24時間後に鼠径部皮下脂肪組織を単離し、酵素処理後、脂肪由来間質細胞分画を抽出した。フローサイトメトリー解析を行い、心筋虚血再灌流群とsham手術(コントロール)群との間で間葉系幹細胞マーカーの頻度(CD34, CD90, CD44, CD73, CD105他)の比較を行った。またこれら古典的な細胞表面マーカーに加えて、より高い再生誘導効率を持つ集団を同定すべく新規表面マーカー候補についてもその頻度を測定した。 現在厚生労働大臣の承認意見書を受けて当施設では、ヒト自己脂肪組織由来間葉系幹細胞を用いた急性心筋梗塞あるいは慢性虚血性心不全に対する心臓再生治療の安全性臨床試験を行っている。本基礎研究では、心臓の急性および慢性疾患背景が、採取抽出し投与する自己脂肪由来間質細胞の再生誘導効率にどのように影響を与えるかが明らかにされる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度はマウスの皮下脂肪由来間質細胞の抽出法の最適化およびフローサイトメトリー解析の条件設定にやや時間を要したものの、マウス心筋虚血再灌流モデル(急性炎症モデル)における皮下脂肪組織由来間質細胞のプロファリイング研究も開始しており、全体としては概ね順調に進捗している。平成27年度も引き続き、実験を推し進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の検討により、マウス皮下脂肪組織から、再現性をもって効率の良い間質細胞の抽出が行えるようになった。また、死細胞や細胞断片など雑多な集団の中から、ターゲットとなる間質細胞を同定し、その表面抗原発現パターンから、細胞特性を分類するためのフローサイトメトリーの条件も設定できた。少数例の解析では、フローサイトパターンが、モデルによって異なっていたので、今後、モデル数を増やしデーターの再現性を確認する。また、その成果をまとめ、国際学会等で発表し広く研究者の意見が得られるようにするとともに、論文での発表を目指す。
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Causes of Carryover |
実験は概ね順調に進捗しているが、効率的な予算執行により端数が生じ、未使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、モデルによる間質細胞プロファイルの違いを決定付けるため、フローサイトメトリー解析を進めるとともに、網羅的遺伝子発現解析などを行っていく。また広く意見を求めるための学会発表、論文投稿の準備を行う。
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