2014 Fiscal Year Research-status Report
心不全におけるミトコンドリア制御・保護因子の探索と病態生理学的意義の解明
Project/Area Number |
26860551
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉沢 隆浩 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (40713392)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ドキソルビシン心筋症 / 臓器保護 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓は、全身の臓器の中でも特にエネルギー需要が高く、細胞のエネルギー(ATP)の産生の場であるミトコンドリアを、他臓器に比べて多く含有する。心不全状態では、心筋ミトコンドリア機能低下を原因とするエネルギー代謝異常が認められ、心不全の病態悪化への関与が問題とされている。 本研究では、心筋ミトコンドリア障害に対するミトコンドリア関連因子による治療実験を実施した。特に平成26年度は、ミトコンドリア制御関連物質として、申請者の先行研究により報告されているアドレノメデュリン(AM)のマウスへの直接投与による影響について検討した。 ミトコンドリア異常を伴う心筋障害のモデルとして、ドキソルビシン(DOX)心筋症モデルマウスを用いた。対照群には溶媒(生理食塩水)を投与した。DOX投与群では、病理学的解析で、心臓組織障害(H&E染色)や心線維化(シリウスレッド染色)が認められたが、DOX+AM投与群では改善が認められた。また、TUNEL染色による検討を行ったところ、DOX投与群で増加していた細胞死は、DOX+AM投与群で抑制された。血清生化学検査によって、組織障害マーカーとしてLDHやCK値を測定したところ、DOX投与群ではLDH,CK共に有意な増加が認められたが、DOX+AM投与群で改善が認められ、AM投与がDOXによる組織障害を軽減することが示唆された。ミトコンドリア制御因子に関する検討では、AM単独投与時にPGC-1やPPAR遺伝子に有意な発現増加が認められた。DOX投与群では、これらの遺伝子の発現減少が認められたが、DOX+AM投与群では遺伝子発現の回復傾向が認められた。 これらの平成26年度に得られた結果から、AMは心臓において、組織障害軽減(臓器保護)作用、抗アポトーシス作用を有すること及び、ミトコンドリア関連因子の遺伝子発現制御作用を有することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究期間中(平成26~27年度)の達成目標は、(1)心筋ミトコンドリア保護作用が期待される化合物の評価と、(2)心不全改善効果の検討および、(3)ミトコンドリア障害時やミトコンドリア保護物質投与により心臓で変動するミトコンドリア制御機構の解明の3点である。平成26年度は、当初の研究計画では(1)を検討する予定であったが、さらに加えて(2)についても行うことができた。 本研究により、ミトコンドリア障害に対するAM投与による心保護作用及び、ミトコンドリア制御作用に関する結果を得た。本研究による生体への被験物質の直接投与による検討で得られたデータは、ミトコンドリア障害を起因とした心不全への治療効果を検証する上で重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は特に、被験物質によるミトコンドリア制御機構を重点的に解析する。AM投与によるミトコンドリア保護メカニズムを詳細に解析することで、心不全の新たな治療標的として、心筋ミトコンドリア制御機構の意義を解明する。 また、学会発表(第42回日本毒性学会学術総会、演題採択済)や、学術論文の発表により、本研究により得られた成果を社会に還元する。
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