2014 Fiscal Year Research-status Report
PGI2封入ナノ粒子を用いた肺高血圧症の新規治療法の開発
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26860563
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
赤木 達 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60601127)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肺高血圧症 / ナノテクノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで肺高血圧の動物モデルとしてモノクロタリンを用いたラットモデルが使われてきた。これはモノクロタリンにより血管炎が起こり、肺血管の中膜肥厚による血管リモデリングを来すモデルである。我々はモノクロタリンモデルラットにPGI2封入ナノ粒子を気管内投与し、肺動脈圧や肺血管リモデリングが改善することを確かめている。しかしこのモノクロタリンモデルラットはヒト特発性肺動脈性肺高血圧症の血管病変の一部を再現するにとどまるため、肺高血圧動物モデルとしては不十分である。一方で最近用いられているVEGF受容体拮抗剤を1回皮下注し、その後3週間10%酸素に暴露して作成するSUGENモデルラットは、内膜や中膜肥厚、Plexiform lesionといったヒト特発性肺動脈性肺高血圧症に類似した肺血管病変を来す(Abe et al. Circulation 2010)。このモデルラットは3週間で肺高血圧を来すようになるが、その後も肺血管病変が進行する。現在は低酸素暴露が終了した後に薬剤を投与することが多いが、それが最適な時期であるかはわかっていない。そのためPGI2封入ナノ粒子を3,4,5週後に単回or複数回投与し、その最適な投与時期や回数を検討する。またPGI2封入ナノ粒子内のPGI2は約1週間でその7割が放出され、その後徐放され30日後にほとんど放出される。PGI2封入ナノ粒子投与2,3,4週間後に、動物用カテーテルを用いた肺動脈圧測定や同時期に得られた肺組織での肺血管リモデリングの程度などから、効果判定時期を検討する。最適な投与時期・回数・効果判定時期が決定した後はPBS,FITC封入ナノ粒子との比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肺高血圧モデルラットはヒト肺高血圧症に類似した肺血管病変をもたらす、SUGENモデルラット(VEGF受容体拮抗剤1回皮下注射+低酸素3週間投与)を使用。この肺高血圧ラットにPGI2封入ナノ粒子を気管内投与し、その後の肺動脈圧を動物用カテーテルを用いて測定。また同時期に得られた肺組織検体を用いて、肺血管リモデリングの程度の検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
SUGENモデルラットを用いたPGI2封入ナノ粒子投与で、肺高血圧改善効果が見られた場合はその機序について探索する。我々の施設は肺移植実施施設であり、特発性肺動脈性肺高血圧症患者より得られた肺組織から肺動脈平滑筋細胞を培養し、その特性や薬物効果を調べる研究が倫理委員会で認可されている。そこでヒト肺動脈性肺高血圧症患者より得られた肺動脈平滑筋細胞やSUGENモデルラットから培養した肺動脈平滑筋細胞を用いて、PGI2封入ナノ粒子の肺高血圧改善機序を調べる。PGI2はIP受容体を介してcyclic AMPを上昇させることで、肺動脈拡張作用をもたらす。また我々の過去の研究からIP受容体を介して、アポトーシス誘導作用を持つFasリガンドをup-regulationすることを報告した。一方PGI2封入ナノ粒子は、ナノ粒子の特性により細胞内に取り込まれて、その中で薬物を放出することができる。すなわちPGI2が肺動脈平滑筋細胞のIP受容体を介さないで、効果を発揮する可能性がある。
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Causes of Carryover |
今年度は予定していた研究打ち合わせを実行することができず、申請していた旅費を使用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品費(実験消耗品)に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)