2014 Fiscal Year Research-status Report
C型ナトリウム利尿ペプチドの多面的作用を活かした難治性心疾患治療法の開発
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26860564
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
植松 悦子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教務補佐員 (10352080)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 循環器 / ペプチド / 心筋虚血 |
Outline of Annual Research Achievements |
生理活性ペプチドであるC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は、血管平滑筋細胞や心線維芽細胞の増殖抑制作用、心肥大抑制作用、抗炎症作用など多彩な作用を有することが報告されている。従来の報告に加え、CNPはcyclic GMPを介して迷走神経活性時におけるアセチルコリンの放出およびそれに伴う徐脈の促進作用があることが報告されており、cyclic GMPを介さないシグナル伝達経路により、交感神経活性化状態であっても徐脈作用や洞房結節の活動電位発火頻度減少作用を有することも明らかとなっている。そこで、本研究では、CNPは自律神経系を調節し心筋梗塞後の心室性不整脈を抑制するという仮説をたて検証した。ラットの冠動脈を結紮し急性心筋虚血・再灌流モデルを作成し(30分虚血、2時間再潅流)、心筋虚血・再灌流の間にCNP(0.1μg/kg/min)または生理食塩水(Vehicle群)の持続静注を行った。なお、開胸のみを行い心筋虚血を起こさないものをSham群として作成した。実験中は心電図モニタリングによって不整脈を観察し、摘出した心臓は病理学的・生化学的に評価した。心筋虚血再灌流モデルラットにおいて、CNP群はVehicle群に比べ心室頻拍の出現を有意に抑制し、心室頻拍総時間においても減少傾向を示した。Kaplan-Meier生存曲線では、CNP群はVehicle群に比べて有意に生存率が高かった。TUNEL染色において、CNPは心筋虚血再灌流に伴うTUNEL陽性apoptosis細胞の増加を抑制した。Western blot法においては、CNPが虚血再灌流後のAktおよびeNOSのリン酸化を促進した。本研究結果として、CNPは心筋虚血再灌流に伴う心室性不整脈の出現を抑制した。その機序として、CNPによるアポトーシスの抑制並びに生存シグナルの活性化が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットの急性心筋虚血・再灌流モデルの作成が順調であること。心筋虚血再灌流モデルラットにおいて、CNP群はVehicle群に比べ心室頻拍の出現を有意に抑制し、心室頻拍総時間においても減少傾向を示していること。Kaplan-Meier生存曲線で、CNP群はVehicle群に比べて有意に生存率が高かったこと。TUNEL染色において、CNPは心筋虚血再灌流に伴うTUNEL陽性apoptosis細胞の増加を抑制していたこと。Western blot法において、CNPが虚血再灌流後のAktおよびeNOSのリン酸化を促進していたこと。 以上の理由から、本研究が概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ラット急性心筋虚血・再灌流モデルにおけるCNPの抗心室性不整脈作用の機序について引き続き研究を行う。特に 虚血域(area at risk)並びに心筋梗塞域(infarct size)の測定をエバンスブルー/塩化2,3,5-トリフェニルテトラゾリウム(TTC)の二重染色にて評価し、梗塞サイズそのものへの影響を調べる予定である。 続いて、高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて、心房細動発症および心房リモデリングに対するCNPの効果を検証する(SHRのみで心筋線維化や炎症が不十分な場合には、さらに浸透圧ミニポンプを用いてアンジオテンシンIIの持続投与を行う)。浸透圧ミニポンプを用いて0.1μg/kg/minのCNP(CNPは血行動態への影響はほとんどないため、必要によりさらに増量して検討する)または5%ブドウ糖液の持続静注を4週間行う。そして、吸入麻酔下(イソフルレン)に電極カテーテル(1.5F)(日本光電:特別注文により作成済、予備実験による検証も済)を頸静脈から挿入し右心房に留置し、電気刺激装置(日本光電SEN-7203)による高頻度ペーシングおよび期外刺激にて心房細動の誘発を行う。その後、心臓を摘出し、心房のSorius Red染色を行い形態学的コラーゲン密度を定量する。そして、Hematoxylin-eosin染色により炎症の程度をスコア化し、CD45(好中球)、CD68(マクロファージ)、CD3(Tリンパ球)等の免疫組織染色を行う。また、線維化関連因子(collagen1&3, transforming growth factor-β1等)、炎症関連因子(macrophage inflammatory protein-1α, tumor necrosis factor-α等)の遺伝子発現を定量PCR法(Applied Biosystems 7500)により解析する。
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