2014 Fiscal Year Research-status Report
心血管疾患における脂肪酸バランス制御の意義と機能の解明
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26860586
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
遠藤 仁 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50398608)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 受容体探索 / ω-3脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は今までの研究から、細胞・組織個々の脂肪酸組成には異なる意義があり、骨髄由来細胞の脂肪酸組成がω-3脂肪酸の心血管保護効果にとって鍵となることを明らかにした。また、LC-MS/MSを用いた脂肪酸代謝物の網羅的解析(リピドミクス解析)により、ω-3脂肪酸が豊富な環境においてEPA代謝物18―HEPEが選択的に増えており、この脂肪酸代謝物がin vivoおよびin vitroにおいて抗炎症性、抗線維化活性を有することを明らかにした。今年度、この成果を論文として学術誌に報告した(Endo J et al. J Exp Med. 211(8), 1673-87, 2014)。 18-HEPEは、マクロファージの培養上清により活性化した心臓線維芽細胞に対し抗炎症活性を示した。この実験系において、18-HEPE以外に構造の近似した脂肪酸代謝物や18-HEPEから産生される抗炎症性脂質メディエーターであるレゾルビンなども添加したが、18-HEPEを上回る生理活性は見られなかった。18-HEPEはナノモル濃度の低濃度で生理活性を示し、濃度依存性に心臓線維芽細胞のIL-6産生を抑制したため、高親和性の受容体の存在が疑われ、GPCRを標的とした受容体探索を開始した。 今までの実験系は、心臓線維芽細胞を初代培養という形で単離・培養し研究に用いてきたが、受容体スクリーニングにはより適正化した細胞が望ましく、できれば均一な細胞集団である細胞株を用いたい。また、刺激に関しても今までマウスから採取したマクロファージの培養上清を用いていたが、より特異性の高い刺激分子を用いる必要がある。そこで現在、18-HEPEの受容体探索に最適な細胞株および刺激分子を選定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
受容体探索には最適化した実験系を要するため、現在はその構築に時間を費やしている。実験系が樹立できた際、研究の進捗も飛躍的に加速し、得られたデータも信用性の高いものになることが予想される。 脂肪酸代謝物のイメージング技術を用いた心臓リモデリングにおける脂肪酸組成の意義についても同時に研究を開始しているが、解析する対象の容量が微量であるため、既存の解析方法では測定できず、検出限界を上げる工夫を要する。現在、予備実験を繰り返している。
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Strategy for Future Research Activity |
受容体探索については順調に進んではいるが、時間を要する探索研究であるため、可能な限り使える解析ツールは用いたいと考えている。βアレスチンを用いたGPCRスクリーニングの解析技術も確立しており利用可能であるため、細胞株、刺激分子が選定できた際は積極的に用いることを検討すべきと考えている。 ω-3脂肪酸の生体保護効果や様々な病態における脂肪酸の意義についても動物モデルを用いて研究を進める準備をしている。脂肪酸の代謝物も水酸化物に限らず、生理活性を有することが報告されているエポキシ体なども心臓に多く含まれていることから病態との関与について注目しており、現在、関係が示唆されるユニークな遺伝子改変マウスをすでに入手している。
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Causes of Carryover |
予定していた海外学会への参加をキャンセルしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞培養用の試薬、消耗品や、入手した遺伝子改変マウスの維持費に用いることが予想される。可能なら昨年度見送った海外学会への参加にも利用したいと考えている。
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