2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26860597
|
Research Institution | 独立行政法人国立病院機構高崎総合医療センター(臨床研究部) |
Principal Investigator |
上野 学 独立行政法人国立病院機構高崎総合医療センター(臨床研究部), その他部局等, その他 (70599563)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 慢性閉塞性肺疾患 / 肺気腫 / マクロファージ / テロメラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では肺気腫モデルマウス及びCOPD患者の肺胞マクロファージでのテロメラーゼ活性を解析し,COPDの慢性炎症のメカニズムを検証しさらにはテロメラーゼ活性阻害剤を用いた新たな治療法の開発を検討することを目的としている. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は肺の炎症反応による進行性の気流制限を呈する疾患である.COPDの病態は肺胞マクロファージを中心とした気道・肺実質・肺血管構造における炎症反応である.喫煙の持続により,肺胞上皮細胞や血管内皮細胞ではテロメラーゼの活性が抑制され細胞老化に至る.COPDにおける肺胞マクロファージは寿命が延長して肺胞内に停滞する期間が長く,慢性炎症の原因となると考えられている.また,動脈硬化領域でも,動脈硬化巣のマクロファージにおけるテロメラーゼ活性が高く,動脈硬化の進行に関与していると報告されている.また,telomerase reverse transcriptase(TERT)の誘導がマクロファージ自体の老化を抑制すると報告されている.COPDでは同じ肺胞内で細胞の種類により喫煙による影響が異なり,肺胞マクロファージのテロメラーゼ活性を解析することで,持続する慢性炎症と病態の進行を解明できる可能性が期待される.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に実施した研究成果としては, 肺気腫マウスモデルの標準的なプロトコールである,1日4本・週6日の6ヶ月間の喫煙曝露をC57BL/6マウスに行い,肺気腫マウスモデルを作成した.肺気腫モデルマウスより, 肺胞細胞(肺胞マクロファージ, Ⅱ型肺胞上皮細胞)を抽出した(primary cell). A群:肺気腫(6ヶ月喫煙曝露)B群:コントロール(6ヶ月空気曝露).細胞の寿命に関しては, 肺胞細胞におけるテロメラーゼ活性(TeloTAGGG Telomerase PCR ELISA)を測定し,肺胞マクロファージと他の細胞とのテロメラーゼ活性の比較を喫煙の有無で行った. その結果, 喫煙モデルマウス群において,肺胞マクロファージではテロメラーゼ活性が上昇し, Ⅱ型肺胞上皮細胞では低下していた.また,喫煙誘導モデルマウスにおいてTERT免疫染色を行ったところ,肺胞マクロファージで発現が上昇していた.さらには,COPD患者の肺組織において免疫染色をおこなったところ,肺胞マクロファージでTERT発現が上昇していた. これらの結果により,COPDでは肺胞マクロファージにおけるTERT活性が上昇し,テロメラーゼ活性が亢進し寿命が延びている可能性が示唆された.
|
Strategy for Future Research Activity |
COPDの肺胞マクロファージの寿命の計測:COPDにおける肺胞マクロファージの正確な寿命を測定することで,本研究の仮説を証明することができる.喫煙誘導肺気腫モデルマウスを作成し, 肺胞細胞(肺胞マクロファージ, Ⅱ型肺胞上皮細胞)を抽出する.その後,テロメア長さをフローサイトメトリーで計測する(Telomere PNA kitを使用). 肺胞マクロファージの寿命が延長していることが予想されるため, 寿命に関わる因子;アポトーシス, 細胞老化, に関して検討を行う. *アポトーシスアッセイ(caspase3/7 assay, Western Blot Anarysis),senescenseアッセイ(senescense assay, real-time PCR(p21, p16)). COPDの肺胞マクロファージの寿命に関わる遺伝子検討:TERT, p21, p16以外の寿命に関わる遺伝子群や, 炎症に関わる遺伝子群の変化をマイクロアレイを用いて網羅的に検討する. また, 変化があった遺伝子に関しては, mRNA発現変化をPCR法で確認する. *マイクロアレイ(microarray assay), mRNA発現の確認(real-time PCR). テロメラーゼ活性から炎症につながる遺伝子シグナルの検討:肺気腫モデルマウスより抽出した肺胞マクロファージおけるTERT遺伝子発現が増加していることを確認の上, TERT遺伝子につながるNF-κBシグナルの活性を測定する. また, その下流の炎症性サイトカイン産生についても確認する.*NF-kBシグナル活性(NF-κB,IκB;Western Blot Analysis),*炎症性サイトカイン産生(TNF-α,IL-1β;Real-time PCR, ELISA).
|
Causes of Carryover |
本研究ではCOPDの肺胞マクロファージを対象とした研究を行っておりますが、本年度では研究費の支出が少なくなってしまいました。その理由として、以下のことが挙げられます。①喫煙誘導肺気腫モデル作成:喫煙期間が6か月間であり、モデル作成を開始しておりますが、完成まで年度をまたいでしまうため、解析が次年度になってしまうため、試薬などの購入が次年度になります。②COPD患者の検体採取:COPD患者の検体採取を当院で行っておりますが、母数が少なく、網羅的な解析を行うためには本年度のみでは完遂できませんでした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.喫煙誘導肺気腫モデルマウスまたはCOPD患者から, 肺胞細胞(肺胞マクロファージ, Ⅱ型肺胞上皮細胞)を抽出する.その後,テロメア長さをフローサイトメトリーで計測する(Telomere PNA kitを使用).アポトーシスアッセイ(caspase3/7 assay, Western Blot Anarysis),senescenseアッセイ(senescense assay, real-time PCR(p21, p16))を行う. 2.遺伝子群の変化をマイクロアレイを用いて網羅的に検討する. また, 変化があった遺伝子に関しては, mRNA発現変化をreal-time PCR法で確認する.3.TERT遺伝子につながるNF-κBシグナルの活性を測定する(NF-κB,IκB;Western Blot Analysis). また, その下流の炎症性サイトカイン産生についても確認する(TNF-α,IL-1β;Real-time PCR, ELISA).
|