2015 Fiscal Year Research-status Report
上皮間葉連関を焦点とした肺発生での上皮Ptenの機能解析
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26860610
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
三浦 綾子 宮崎大学, 医学部, 研究員 (70710903)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肺発生 / Pten |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細気管支肺胞上皮特異的Pten 欠損マウスを用い、分子生物学、細胞生理学の手法にて肺発生におけるPten の制御機構をシステミックに解明することにある。 細気管支肺胞上皮(AEC)特異的Pten 欠損マウス(SOPten△/△マウス)と野生型マウスの胎生肺組織を用いたDNA microarray 解析により、神経内分泌細胞(Calca)、Club 細胞(Scgb1a1)、杯細胞(Agr2) の発現上昇、AECII(Sftpa) の発現減少を確認した。これらの結果はmRNA及びタンパク質発現レベルで同様の結果を得た。これに加えて、AECI(Aqp5, T1α)の発現増加を確認した。さらに、透過型電子顕微鏡による超微細構造分析を行ったところ、野生型マウスの肺では、偏平形のAECIと立方形のAECIIを確認できたが、これとは対照的に、Pten KOマウスの肺は、未分化の両能性前駆細胞数を多く含んでいました。さらに、PtenKOマウスの血液空気関門は、野生型に比べてはるかに厚くなり、細気管支では、クララと杯細胞の著しい過形成を示した。まとめると、これらのデータは、上皮Pten欠損が肺の発達中にClub細胞、杯細胞、神経内分泌細胞とAECIの増加、AECIIの減少につながることを示している。 続いて、上皮細胞分化にNotchシグナルが関与することが報告されていることから、肺上皮細胞の分化に関与する細胞運命決定因子について解析を行った。PtenKOマウスにおける免疫染色及びwestern blotにて、Notch1,2,3、Hes1、Mash1、Sox2の発現上昇を確認した。よって、上皮PTENは肺発達において、Notchシグナル、Mash1シグナルおよびSox2シグナル経路を調節し、多能性上皮前駆細胞の分化方向をはじめとする細胞運命決定を制御し、正常な肺発生を遂行する上で重要な役割を有することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、SOPten△/△マウスと野生型マウス胎児のE18.5を用いて、研究を進めてきたが、E12.5及びE14.5を解析することにより、より詳細な分化メカニズムを解明できると考えられる。そして、SPC-Creマウスを用いてこれまで研究してきたが、さらに、Shh-Creマウスを用いて再検証実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)Pten KOマウス (SOPten△/△またはShhPten△/△)と野生型マウス胎児(E12.5、E14.5、E18.5)におけるNotchシグナルの発現時期やNotch受容体を制御する因子を決定するために詳細な解析を行う。
(2)Pten KOマウス (SOPten△/△またはShhPten△/△)と野生型マウス胎児(E12.5、E14.5、E18.5)における間葉系細胞マーカー(α-SMA、FSP-1、vimentin、collagen-1、MMP-1)の発現動態をmRNA及びタンパク質レベルで解析する。
(3)in vitroにて上皮PTENの機能を解析するために、ヒト肺上皮細胞株(BEAS-2B)に野生型PTEN遺伝子、ホスファターゼ活性を欠損させたドミナントネガティブPTEN遺伝子、空ベクターをそれぞれレンチウイルスを用いてトランスフェクションした系を確立しているので、分化方向決定因子の詳細な解析を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年4月から12月まで産後休暇及び育児休暇を取得し、平成27年1月より職務復帰したため計画よりも学会発表する機会が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1) 当初の計画には予定していなかったShh-Creマウスを新たに購入する費用として使用する。 (2) 平成28年度は国際学会にて発表を行う予定であるので、学会渡航費として使用する。 (3) 平成28年度中に論文投稿を行い、リバイス実験にて予算を執行する。
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Research Products
(3 results)