2014 Fiscal Year Research-status Report
腎線維化に寄与する非翻訳RNAの同定およびその転写制御機構の解明
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26860627
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三村 維真理 東京大学, 先端科学技術研究センター, 研究員 (00727084)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 慢性腎不全 / 低酸素 / ヒストン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者三村維真理は、in vitroおよびin vivoでの腎尿細管間質の線維化に寄与するエピジェネティックなメカニズムおよびlinc RNAを同定するため、下記のような実験を行っている。まず、ヒストン修飾の中でも遺伝子発現の抑制マークであるH3K27me3を阻害する役割を持つDznepを慢性腎不全モデルマウスに投与し、その効果を観察した。その結果、腎尿細管間質の線維化はDznep投与群で軽快し、エピジェネティックな抗線維化メカニズムが働くことが推察された。近位尿細管細胞におけるDznepの役割を明らかにするため、Laser Capture Microdissectionを用いて近位尿細管細胞のみを抽出し、高速シークエンサーを用いて遺伝子発現を網羅的に解析した(RNA-seq)。解析については取り扱うデータ量がかなり大きいためBioinformatics専門の技術員と相談しながら現在解析を進めているところである。 さらに、in vitroでのDnzepの役割を明らかにするため、近位尿細管細胞株であるHK2(human kidney-2)とプライマリーカルチャーのヒト近位尿細管細胞株RPTEC(renal proximal tubular epithelical cell)を用いて、1%低酸素刺激条件下で24時間培養したのち、Dznepを培養液中に投与し、24時間~72時間の刺激を行い、RNA-seqを施行した。この結果についても解析を行い、in vivoで得られた結果と比較することにより慢性腎不全に寄与するエピジェネティックな因子が同定することが可能であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者三村維真理はin vitroおよびin vivoのサンプルを慢性腎不全モデルおよび培養細胞株から予定通り調整し、RNA-seqを遂行した。In vivoのサンプルはLaser Capture Microdissectionを用いているため、得られるmRNA量がごくわずかでありサンプル調整が非常に困難かつ高度な技術を必要とした。In vitroについては培養細胞株に対してヒストン修飾阻害薬Dznepを投与して効果が得られる実験条件を検討するのに時間を要したが、低酸素刺激を加えつつDznepによりH3K27me3を減少させることが可能な実験条件を見つけることができたので、研究の達成度はおおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は、1年目に遂行したRNA-seqの網羅解析結果をまとめ、in vivoおよびin vitroの両方で慢性腎不全の進行に寄与するエピジェネティックな因子すなわちlincRNAと、それが制御する遺伝子群を同定したいと考えている。さらに、これらの転写産物にHIF1およびEzh2を含むポリコーム複合体が結合しているかどうかを正常酸素分圧下および低酸素分圧下条件下でのChIP-seqにより解析したいと考えている。また、in vivoでlincRNAに特異的なanti-sense oligo(ncRNAインヒビター)を慢性腎不全モデルマウスとして使う虚血再灌流(I/R; ischemia/reperfusion)モデルマウスに投与することにより腎尿細管間質の線維化が軽減される効果を発揮するかどうかを検証したいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究代表者三村維真理が今年度作成したサンプルのうち、in vivoのサンプルはLaser Capture Microdissectionを用いているため得られるmRNA量がかなり少なく、サンプル調整するのに時間を要した。さらに得られたサンプルを高速シークエンサーを用いてRNA-seqを行っているが、高速シークエンサーは研究室全体の共用備品であるため他の研究者も使用しており、サンプルが調整でき次第すぐに使用できるわけでなく、制限がある。また、高速シークエンサーによる網羅解析データはデータ量が膨大であるため、解析するのに時間がかかることから使用額に差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度で得られた網羅解析データの結果をもとに、in vitroではHIF1およびEzh2の低酸素条件およびDznep投与条件下でのChIP-seqを施行する予定である。また、in vivoでは網羅解析データの結果を基に、lincRNAに特異的なanti-sense oligo(ncRNAインヒビター)を購入し、慢性腎不全モデルマウスに投与して腎尿細管間質の線維化が軽減されるかどうかを検証したいと考えている。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Cross-enhancement of ANGPTL4 transcription by HIF1 alpha and PPAR beta/delta is the result of the conformational proximity of two response elements.2014
Author(s)
Inoue T, Kohro T, Tanaka T, Kanki Y, Li G, Poh HM, Mimura I, Kobayashi M, Taguchi A, Maejima T, Suehiro JI, Sugiyama A, Kaneki K, Aruga H, Dong S, Stevens JF, Yamamoto S, Tsutsumi S, Fujita T, Ruan X, Aburatani H, Nangaku M, Ruan Y, Kodama T, Wada Y.
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Journal Title
Genome Biology
Volume: 15
Pages: R63
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Direct Evidence for Pitavastatin Induced Chromatin Structure Change in the KLF4 Gene in Endothelial Cells.2014
Author(s)
Maejima T, Inoue T, Kanki Y, Kohro T, Li G, Ohta Y, Kimura H, Kobayashi M, Taguchi A, Tsutsumi S, Iwanari H, Yamamoto S, Aruga H, Dong S, Stevens JF, Poh HM, Yamamoto K, Kawamura T, Mimura I, et al.
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Journal Title
Plos One
Volume: 9
Pages: e96005
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Endothelin-converting enzyme is a plausible target gene for hypoxia-inducible factor.2014
Author(s)
Khamaisi M, Toukan H, Axelrod JH, Rosenberger C, Skarzinski G, Shina A, Meidan R, Koesters R, Rosen S, Walkinshaw G, Mimura I, Nangaku M, Heyman SN.
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Journal Title
Kidney International
Volume: 87
Pages: 761-770
DOI
Peer Reviewed
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