2014 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎臓病と臓器連関の病態におけるergothioneine/OCTN1の関与
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26860631
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
篠崎 康之 金沢大学, 医学系, 特任助教 (60706878)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / 酸化ストレス / トランスポーター / 臓器連関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は慢性腎臓病の進展過程における,ergothioneine(ERGO)およびそのトランスポーターであるorganic cation transporter 1 (OCTN1)を介した病態の解明を目指すものである.ERGOは強力な抗酸化作用を有するアミノ酸であることが知られている.これまでに我々は,腎不全患者では赤血球中のERGOが健常者と比較して変化していることを確認している.ヒトはERGOを合成できないため,キノコなどの真菌により合成されたERGOを経口摂取し,小腸上皮細胞に発現しているOCTN1により体内に吸収することが,唯一の取り込み経路である.慢性腎不全モデルマウスの検討で,このERGOの唯一の取り込み経路である小腸のOCTN1によるERGOの吸収する機能が変化していることを確認した. また,OCTN1ノックアウトマウスの慢性腎不全モデルにおいては,酸化ストレスマーカーである4-HNE陽性細胞が増加した.TGF-βの発現を介した線維化病変に影響していると考えられる. これらの結果から,慢性腎臓病ではOCTN1を介して腎病変,ことに線維化に関与することが示唆された. 上記内容は,第57回日本腎臓学会学術総会で発表した. 本研究は腎臓病の進展機序をトランスポーターの視点から解析するものであり,ERGO-OCTN1を介した線維化機序の解明から腎臓病進展の新たな治療法の開発に貢献したい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,慢性腎臓病における,1)全身臓器のOCTN1発現の変化の検討 2)ERGOの腸管からの吸収と,血中から全身臓器内への取り込みの検討 3)ERGOによる抗酸化作用と臓器障害の検討 の3ステップからなる.今年度は1),2)のステップを中心に研究を行った.マウス慢性腎不全モデルマウスの検討において,小腸のOCTN1を介したERGOの吸収が変化していることを確認した.一方,肝臓や心臓といった他の臓器においては,OCTN1発現の変化,血中から臓器内への取り込みに差を認めなかった.慢性腎臓病が特に腸管のトランスポーターに変化をもたらしている可能性が考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,3)ERGOによる抗酸化作用と臓器障害の検討を進めている.ERGOの抗酸化作用がもたらす影響について,まず腎尿細管上皮細胞を用いた検討を用いた検討を行う.尿細管上皮細胞は,OCTN1ノックアウトマウスおよび野生型マウスの腎臓からprimary culture cellを培養し,OCTN1の有無による差を検討する.また,慢性腎臓病が遠隔臓器である腸管のトランスポーターを変化させるメカニズムについても検討していく.
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Research Products
(1 results)